2017.12.24 11:00

【50歳オッサン記者 新人猟師日記(3)】仕留めた猪は責任もって処理するのがハンターの義務 「生き物」が「食べ物」に変わる瞬間

【50歳オッサン記者 新人猟師日記(3)】

仕留めた猪は責任もって処理するのがハンターの義務 「生き物」が「食べ物」に変わる瞬間

特集:
新人猟師日記
つかまえた猪を慣れた手つきで解体するベテランハンターたち。「生き物」が「食べ物」に変わる瞬間だ

つかまえた猪を慣れた手つきで解体するベテランハンターたち。「生き物」が「食べ物」に変わる瞬間だ【拡大】

 「食べない奴は続かないよ」。猟に参加するにあたり、リーダーのI社長に言われた言葉だ。命に向き合う狩猟は糧を得る行為である。世はジビエブームだという。テレビや雑誌でも見かけることが多い。獣害に苦しむ自治体では、食べることに関心が向き捕獲が進むことを期待し、ワークショップなども開催している。

 仕留めた動物は、責任をもって処理するのがハンターの義務だ。たとえば山中で仕留めた鹿や猪が大きく簡単に山から下ろせなければ、血抜き処理を施し、その場での解体も珍しくない。

 まず腹の皮だけをナイフで切り開く。内蔵を傷つけないよう細心の注意を払って外すのは、肉に臭みが回らないようにするためだ。つながったままの腸や胃袋は、冷気に触れ湯気を立てている。レバーや心臓を切り離し、ももやロースを皮からそぎ落としたら、ナイフ1本で関節も外す。

 「ここが背ロース。うまく外さないと食べるところが減っちまうぞ」

 「真っ白でキレイだろ、猪はこの脂がうまいんだよ」

 Sさんはグループの中でも解体の名人。皮と骨だけが残され、やがて見慣れた肉の塊が出現する。「生き物」が「食べ物」に変わる瞬間だ。

 「怖い」「気持ち悪い」「グロい」。一般的にはそんなイメージだろうか。しかし、大先輩たちの見事な手さばきを初めて見たときは、その高い技術に感動を覚えた。少し手伝わせてもらうが、学ぶことは多い。

 グループの猟では仕留めた者に権利があるが、全員で追い込んだ共有感もある。たとえばその日、10人で鹿と猪を獲ったならロース、もも、バラ肉など部位ごとに人数分に切り分けられる。

 猟期は、ほぼ毎週日曜日が狩猟日。17日は後輩の法事で欠席したので、12月24日が年内最後かと期待していたら、Kさんからの電話が鳴った。

 「年内は終わりです、また新年に。そういえばこの前は50キロ超の鹿を仕留めましたよ」

 「あ、そうなんですか。おめでとうございます…」

 うらやましい。年内に1頭は仕留めたかったが、年の瀬だから仕方ないか。前週、100キロ級の猪を逃したことを、まだ引きずっている。「新年最初の猟では」と気を取り直し、銃をロッカーにしまった。(不定期掲載)

芳賀 宏(はが・ひろし)

 1991年入社。オウム事件、警視庁捜査一課からプロ野球のベイスターズ、ヤクルト、NPB、2003年ラグビーW杯、06年サッカーW杯を担当した“何でも屋”。サンスポ、夕刊フジ、産経新聞で運動部デスクを務め、2016年夏から振り出しに戻って、一兵卒。同年に第1種狩猟免許取得。

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