2013.8.22 05:00(1/2ページ)

【末代までの教育論】“甲子園の土”はおみやげか!?

特集:
末代までの教育論 野々村直道(前開星高校野球部監督)

 夏の全国高校野球選手権大会開催中の8月15日、甲子園球場では野球殿堂入りした福嶋一雄氏(82)の表彰式が行われた。その福嶋氏が「甲子園の土を持って帰る。あれはいけませんなあ。思い出として少しだけそっと持って帰るのならまだしも、シューズ入れやバッグいっぱいにかき集めてどうするんでしょうねえ」と語ったという報道を知って驚いた。球児として最初に甲子園の土を持ち帰った人と聞いていたからである。しかし福嶋氏はこう続ける。「甲子園の土はおみやげじゃありません。それより甲子園目指して一生懸命努力した思い出をもっと大切にしてほしい」。

 福嶋氏は夏の甲子園大会で小倉中(現小倉高)のエースとして1947年から2連覇を達成。49年に準々決勝で敗退したあと、無意識に足元の土をつかんでユニホームのポケットに入れたという。血と汗にまみれた甲子園の土をたった一握りの思い出として思わず握りしめたのである。それが今では敗者の儀式として大量に持ち帰る。その姿を苦々しく思っているのだろう。

 この一連の談話を聞いて“わが意を得たり”と思った。私は10回甲子園に出場したが、ただの一度も敗れて土を持ち帰らせなかった。敗者は静かに戦場を去らねばならない。甲子園で戦うことができたという事実だけを思い出として残して帰れば良いと思っていたからである。だから指導者の信念として土の持ち帰りは厳禁した。私は常々「あの土は甲子園の備品である。だからそれを持ち帰るのは窃盗罪である」と真顔で選手たちに言ってきた。

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