自民党総裁選、重み増した「地方票」 新方式がドラマを生むのか

科学特捜隊
2012年の総裁選は決選投票に持ち込まれ、安倍首相が石破氏を破った。石破氏は地方票で上回りながら党総裁になれなかった唯一の事例に

 サンケイスポーツ東京発刊55周年企画、第17回のテーマは20日に投開票される「自民党総裁選」だ。「議員票」の8割を固めた安倍晋三首相(63)=総裁=が、石破茂元幹事長(61)に圧勝すると伝えられているが、勝敗を左右するのは「地方票」。過去12回の総裁選のうち、11回を地方票トップの候補が制しているのだ。党則改正で今回さらに重要度を増した「地方票」のデータを分析する。 (取材構成・丸山汎)

 7日に告示された自民党総裁選。事実上、日本の首相を決める選挙は、党内7派閥のうち細田、麻生、岸田、二階、石原の5派閥(計257人)を確保した安倍首相が優勢。議員票405票の約8割に当たる336票を固めている。一方の石破氏は、自派や参院竹下派など46票。議員票だけでは完敗は避けられない。

 しかし、総裁選の行方を左右するのは「地方票」だ。党員・党友による予備選が初導入された1978年から、いきなり波乱を起こしている。

 優位とされた現職の福田赳夫氏が、大平正芳氏に予備選で敗れ本選辞退に追い込まれた。これが史上唯一の現職敗戦で、福田氏の「天の声にも変な声がある」との恨み節は、今も政界に名言となって残っている。

 また2001年には、大派閥の支持を得ていた橋本龍太郎氏を、小泉純一郎氏が“小泉旋風”で吹き飛ばした。地方票で123票を集めた小泉氏に対し、橋本氏は15票。大番狂わせを起こした。

 このように、地方票の得票数が明らかになっている過去12回の選挙戦で、地方票トップの候補は11勝1敗。まさに地方票を制した候補こそが、総裁選を制している。

 一方、この唯一の例外の当事者となったのが、奇遇にも安倍首相と石破氏だ。12年の総裁選の1次投票で、石破氏は地方票で165票を獲得しトップに。安倍首相(87票)に2倍近い大差をつけた。

 しかし、国会議員のみの決選投票は安倍首相108票、石破氏89票。石破氏は地方票で勝ちながら総裁になれなかった、唯一の候補となった。

 前回15年は安倍首相以外に候補者がおらず、無投票で決着。この間の規約変更で、地方票の重みはさらに増した。

 300票の固定から、議員票と同数(今回は405票)に増加。票数も、都道府県単位から全国一括で集計するように変更し、地域格差がなくなった。国会議員のみだった決選投票にも、都道府県票(47票)が加算される。

 12年の安倍-石破対決をこの新方式で算出すると、何と、安倍首相152票に対し、石破氏は253票。議員票で圧倒されたはずの石破氏が大逆転するのだ。

 そのため、安倍首相は地方票の掘り起こしに躍起となっている。今年に入って首相官邸や視察先で地方議員らとの面会を重ね、その数、実に100回を超える。石破氏も47都道府県別のメッセージ動画を制作するなど、地方重視をアピールしている。残り10日間を切った選挙戦に注目だ。

政治評論家・有馬晴海氏「安倍首相は3選後の憲法改正をにらみ、国会議員票と地方票計810票のうち8割を取り、石破氏を圧倒する勝利を目指している。一方の石破氏は地方票で4割を取り、存在感を示したい構えだ。ただ、選挙後の人事が絡む議員票ほどではないにせよ、地方票も実際は『組織票』だ。安倍首相が6年間現職にいる強みは大きい。石破氏は『安倍1強』への不安や批判などで党員以外の支持は多いが、得票は良くても全体の3割にとどまるのではないか」

★自民党総裁選の仕組み

 党所属国会議員20人の推薦を得た国会議員が立候補できる。今回は405人の国会議員票と、党員・党友による地方票405票の計810票で争われ、過半数を獲得すれば当選が決まる。地方票は従来300票に固定されていたが、2014年に所属国会議員と同数に変更した。配分も都道府県ごとの「持ち票」を得票に応じてドント式で割り振る方式から、全国で一括集計して割り振る方式に改定した。

★自民党の党員数

 1991年の546万5000人がピーク。当時は党員が多い団体の組織候補を、参院の比例代表名簿の上位に据えていたため、各団体が党員集めを競っていた。比例のシステムが変わると減少に転じ、2012年には73万人まで後退した。14年から国会議員に「党員1000人獲得」のノルマを課すなど党勢回復に注力、昨年は106万8560人まで戻した。今回、総裁選に投票できる党員の選挙人数は104万2647人。

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