唇を“重ね”、嫉妬と欲望に狂う朝ドラヒロイン2人の衝撃映像/週末エンタメ

 
映画「累-かさね-」メインビジュアル©2018映画「累」制作委員会©松浦だるま/講談社

 今をときめく新進女優が何度もキスをかわすだけで驚きなのに、憤怒の形相でののしり合い、見苦しいほどに取っ組み合い、恍惚の表情で“狂気”に染まっていくさまはまさに衝撃だ。

 土屋太鳳と芳根京子という朝ドラヒロインを務めた2人がW主演する“初競演作”は、9月7日公開の映画「累-かさね-」。松浦だるまさんの同名漫画が原作で、誰もが眉をひそめる醜い容姿に天才的な演技力を宿した累(かさね)と、絶世の美女に生まれながら“ある秘密”が理由で芽が出ない舞台女優、ニナの欲望と嫉妬をむき出しで描く物語だ。

 幼い頃から自身の容姿に劣等感を抱いてきた累は、大女優だった亡き母が残した“不思議な口紅”で人生が変わる。相手にキスをすると、顔が一時的に入れ替わる魔法の口紅をきっかけに、運命的に出会ったニナと“闇の契約”をかわすことになる。

 口から頬に深く刻まれた傷のせいで美しさと愛に餓えてきた醜い女と天に二物を与えられなかった美女。2人は禁断のキスを何度もかわし、ニナの顔を手に入れた“天才女優”累は、スターの階段を一気に駆け上がっていく。一方、累を利用して名声を得るはずだったニナは、いつしか自分の存在が“乗っ取られている”ことに気づき、嫉妬にさいなまれる。累も美しさや才能で周囲に認められる快感を知り、ニナと完全に“同化”する欲望にかられていく。

 土屋は、どこまでも高飛車で自身の成功しか考えないニナ役。芳根は、醜い容姿でさげすまれ、闇の底に沈むことで生き抜いてきた累役。顔が入れ替わると性格が豹変する“一人二役=二人一役”を演じており、まさにジェットコースターのような芝居を繰り広げていく。

 陰気で恨めしい累=芳根は、ニナになると傲慢で挑戦的な女王の顔を見せる。一方、ニナ=土屋に累が宿ると、おどおどした表情を見せながら、女優として舞台に立った瞬間、水を得た魚のごとくメリハリのある演技で魅了する。

 互いに豹変する演技で、相手を辛辣な言葉でいたぶったかと思えば、何度もキスをして、光と闇、優越感と劣等感を行き来する。劇中の土屋と芳根は、表裏一体な運命共同体でありながら磁石のS極とN極のごとく全身全霊で拒否し合い、ハイテンションな芝居で戦い続ける。

 優越感を味わえば味わうほど相手を“占領”せずにはいられなくなる狂気と、劣等感を知れば知るほど対極にいる相手を許せなくなる憎悪。2人が入れ代わり立ち代わり演じる累とニイナのそれは、物語が進行するにつれ、豹変するまでの“インターバル”が短くなり、たとえば鼓の腕比べのように、その演技も激情を増す。絶え間ない演技合戦は、確実な相乗効果を生み、土屋と芳根の怪演にどんどん観客は惹きつけられていく。本人たちも試写会で涙ながらに語っていたが、まさに「身を削って演じた」渾身作なのだ。

 「累」には、スター女優の道を猛烈な勢いで突き進む2人の“リアルな真剣勝負”も凝縮されている。数十年後、彼女たちが名女優と呼ばれるようになった時、“累がきっかけだったのかも”と言われているかもしれない。(大塚美奈)

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