映画のPRイベントのあり方に一石を投じた池上流名解説/芸能ショナイ業務話

 
アメリカの“闇”に鋭く切り込んだ池上彰氏

 ジャーナリストの池上彰氏(67)が米映画「ウインド・リバー」(27日公開)のPRイベントに出席するというので取材に出かけた。

 同作はアメリカ先住民を取り巻く困難を題材にしたクライム・サスペンス。アメリカの麻薬戦争の実態に迫った「ボーダーライン」(2015年)、アメリカンドリームの衰退をあぶりだした「最後の追跡」(2016年)の脚本を手がけたテイラー・シェリダン氏が監督を務め、第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞に輝くなど世界的に高く評価されている。

 「ボーダーライン」「最後の追跡」「ウインド・リバー」、この3作に共通するのは現代社会の潮流から外れた“忘れ去られた人々”に焦点を当てていることだ。「ウインド・リバー」について言えば、当初は全米4館という限定公開でスタートしたが、作品のクオリティーの高さから公開4週目には2095館へと拡大。以来、6週連続トップテン入りのロングランヒットを記録したというのも異例の展開だ。

 荒れ果てた大地での生活を強いられたネーティブアメリカンの姿と彼らを取り巻く制度的苦難や貧困を描いた同作はまさにアメリカの闇を描き出しているといえる。池上氏はアメリカの複雑な警察制度について平易な言葉で解説し、コミュニティー崩壊の原因などアメリカ先住民の置かれている状況をデータで丁寧に示していった。コロンブスのアメリカ大陸“発見”という文言が抱える矛盾や失踪者の統計がとれない理由など、いずれも説得力のある説明が続き、会場に招かれた映画ファンの関心をぐいぐいと引き寄せていった。

 このイベントを取材して記者が考えたのは、昨今の映画PRイベントのあり方だ。タレントを招いてお笑いトークを展開し、そのうちメディアの関心はそのタレント自身のプライベートへと焦点化されていってしまい、肝心の映画の中身についてはほとんど印象に残らない、というパターンが実に多い。

 映画ファンが本当に知りたいのは、その作品の持つ歴史的位置付けや社会性、あるいはその作品を観賞することで得られる満足の予見であろう。そうであるならば、作品の魅力や意義についてじっくり聞くことができるPRイベントこそ実は望まれているのではないだろうか。PRイベントのあり方を自省的に練り直す時期に来ているといえそうだ。 (シネマの夜明け) 

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