ロックバンド・くるりの新曲はカセットテープで楽しめる/芸能ショナイ業務話

 
ロックバンド、くるりの(左から)佐藤征史、岸田繁、ファンファン

 ロックバンド、くるりが、27日に新曲「だいじなこと/忘れないように」をカセットシングルとして発売する。CD化や配信は予定せず、1回限りのカセット生産だ。

 昭和生まれにとって懐かしいカセットは音楽のダウンロードやストリーミングが定着した今、記録媒体として手に取る機会がなくなった“絶滅危惧種”だ。しかし、現在も演歌では、CDとカセットで新曲を発売するのが定番だ。近年、カセットの魅力は再注目され、2016年にロックバンド、ユニコーンもシングル「エコー」をカセットで発売している。

 とはいえ、くるりの新曲は、単なる懐古趣味でカセットの復刻を目的としたものではない。スタッフは「音楽は想像をめぐらせるものであり、自由であってほしい。楽しみ方に多様性をもたらしたい」と最近の主流にとらわれずに音楽を届けたいとの意図を明かした。

 1980~90年代にヒットしたフィルム式カメラ「写ルンです」の人気再燃に触れ、「撮ったものを確認できるスマホやデジカメと違い、フィルム式カメラには何が写っているのかわからないというわくわく感がある。今はデッキを持つ人が少ないカセットも、どんな音楽が入っているのかと想像をかきたてるものだと思います」と話す。

 結成から20年を過ぎたくるりはこれまで、テクノやクラシックなどロックバンドの枠にとらわれない音楽を作ってきた。07年から毎年9月に地元京都で開催する野外フェス「京都音楽博覧会」も演歌あり、歌謡曲ありの“多国籍”だ。

 最近の新曲の発売形態も変わっている。昨年9月発売のシングル「How Can I Do?」はDVD・ブルーレイに封入され、今年2月発売の「その線は水平線」には折り紙が入っていた。一部のファンからは「普通のシングルを発売してほしい」という現実的な声もあるそうだが、こんな遊び心も、らしいといえばらしい。

 一昔前のアイテムはある世代には「懐かしい」、その別の世代には「新しい」と映り、時代を超えてシンクロする。収録される2曲が「だいじなこと」「忘れないように」という名前になったのは偶然だというが、この2つの言葉がタイトルになったのも奥深い。

 カセットとケースは、くるりの所属レコード会社が演歌部門で使用しているものと同様のタイプという。新進気鋭のイラストレーター、影山紗和子さんが描き下ろしたボックスに収められ、おしゃれで、かわいらしい。

 筆者も含め、最近はカセットデッキを所有する人の方が少ないだろう。しかし、カセットデッキを探しに久しぶりに実家に帰るのか、または新たに購入するのか、音楽が消費されていく昨今、一手間をかけるのも粋だ。 耳は高音質に慣れてしまったが、カセットのやわらかい音が懐かしい。(R)

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