高田次郎さんの教え/週末エンタメ

 
新橋演舞場「創立70周年記念公演 松竹新喜劇」の記者懇親会に出席した左から久本雅美、藤山扇治郎さん、渋谷天外、高田次郎さん=東京・銀座

 松竹新喜劇の“大御所”、高田次郎さんを取材したときのことです。

 今年12月に87歳を迎える高田さんは、滑舌もよく、かくしゃくとして、とにかく元気。ご本人は「来年、生きているかどうかわからない」とぼやきますが、そんな気配はみじんも感じられません。

 高田さんは7月13日に東京・新橋演舞場で開幕する「劇団創立70周年記念公演 松竹新喜劇」の演目「人生双六」に出演。喜劇王の故藤山寛美さんと共演した同作を「一番、思い出深い」と話し、「10分くらいで引っ込んでしまうけれど、この10分間で『高田次郎ここにあり』というような存在感を見せて、なんとか芝居を盛り上げるつもり。そうじゃないと、松竹から給料をもらいにくい」と“オチ”をつけ、会場を和ませました。

 さらに、松竹新喜劇65周年の初主演をきっかけに同劇団6回目の出演となる久本雅美さんに、「いっぺん、夫婦の役か恋人役をやらせてもらいたい」と直談判。松竹新喜劇を牽引(けんいん)する渋谷天外さんの「来年、来年」となだめる声に「生きてるかどうか、分からない」とぼやき、報道陣を笑わせました。

 そんな柔らかい物腰の高田さんが会見中、厳しい言葉を発した場面がありました。

 同席した寛美さんの孫、扇治郎さんが10年後に二代目寛美の襲名はあるか、と聞かれたときのこと。扇治郎さんは「周りが決めること。そう思っていただけるだけでも大変うれしい」と丁寧に応じました。

 高田さんはすかさず「それは(寛美さんの娘の藤山)直美さん許可がいるな。ダメといわれたらできない」と前置きし、「名乗らんでも、扇治郎でいけるような役者になるのがいいのでは」とさりげなく、若い扇治郎さんと質問をした報道陣へ大切なことを伝えてくれました。

 苦労をいとわず、俳優という職業を松竹新喜劇で磨いてきた高田さんの言葉に込められた厳しくも温かい心が、醸し出される舞台になりそうです。(栗原智恵子)

Read more