【竿々学々】
――師匠、今シーズンも江戸川放水路河口付近のマコガレイが、結構釣れていますね。
「おお、今シーズンは特にいいみたいだな」
――この間、父がお友達と行ってきたんですって。数は2人で5匹だったそうですが、一番小さいのでも32センチ、大型は40センチを超えていたそうですよ。以前もお聞きしましたが、東京湾のマコガレイといえば、秋から冬のシーズンを代表する釣り物だったんですよね。
「ああ、その通りだ。1990年代頃までは、東京湾の冬の釣り物といえば、真っ先に挙げられたのがマコガレイで、20~30匹は当たり前に釣れ、50匹以上釣る猛者も少なくなかった」
――その話、以前にも伺ったと思うんですが、そのマコガレイがなぜ、今のように貴重な釣り物になってしまったんでしたっけ。
「以前にも話した気がするが、正直なところ、いまだに明確な理由は分かっていない。東京湾の海底が砂質から泥状になってしまったため、マコガレイの餌になっていた何かが激減したため等々いろいろな理由が取り沙汰されたが、どれも決定的なモノとは言えないってことで、いまだに原因不明ってことになっている」
――それでも、この行徳沖で毎年釣れているように“絶滅”してしまったわけではないんですよね。
「ああ、行徳沖と神奈川の金沢八景沖の一帯では、今でも毎年乗合船が出て、釣っているからな」
――金沢八景沖でも同じような釣れ方なんですか。
「そうだ。船中で2桁釣れればまずまずの成績だな。サイズは行徳沖と同じで30~40センチ級の良型中心だ」
――でも、それって少し変ですよね。マコガレイが30センチ以上に育つにはそれなりの年月がかかりますよね。
「ああ、30センチを超えるには少なくとも4、5年はかかると思うがな」
――だったら、何で小型のマコガレイがシロギス釣りやイシモチ(シログチ)釣り、カサゴ釣りなんかで交じってこないんですか。
「う~ん、鋭いな。恐らく生息場所が違うんだろうな。小型のマコガレイがほとんど釣れないのは、生息場所が違うとしか考えられないからな」
――う~ん、難しいですね。でも私、マコガレイ釣りって好きなんですよ。置き竿の道糸が引き込まれていくアタリって、他の釣り物ではあまりないですよね。
「確かにな。久しぶりにあの感触を楽しみたくなったな。父君にもう一度行きませんかと聞いておいてくれ」
――はい。分かりました。私もお供します。
「おお、今週末か来週末にでも出掛けよう」
――はい。