【竿々学々】
――師匠、サクラマスって海に降りたヤマメのことですよね。サケよりおいしいっていつも言ってらっしゃる、あのお魚ですよね。
「そうだ。その通りだが、サクラマスがどうしたんだ」
――父に聞いたんですが、南北海道の船釣りでサクラマスが絶好調だそうじゃないですか。
「おお、確かに今シーズンは、半端じゃない釣れっぷりが続いている。こ
の時期だけに船が出られない日も多いんだが、船さえ出られれば確実に釣れているからな」
――沖釣りでもバッグリミットが設けられているって聞いたんですが…。
「ああ、遊漁船同士の申し合わせで上限10匹のバッグリミットが決められ
ている。ちょっと数が多い気もするが、貴重な魚だけにいいことだよな」
――条件のいい日には、乗船者全員がバッグリミットを釣っちゃうこともあるって聞きましたが…。
「その通りだ。この間、室蘭の船長に電話で聞いたんだが、今シーズンの
魚影の濃さはすごいって言っていた」
――師匠がいつも長万部のお友達のところにいらっしゃるのは、6月頃でしたよね。
「そうだ。今、沖で釣れているサクラマスが、5月末から6月頃になると、接岸してきて港の中なんかにも入り込んでくる」
――以前、長万部港で師匠とお友達がサクラマスを釣って来たのは、いつでしたっけ。
「ああ、あれは2018年の6月だ。翌年は、俺が体調を崩して行けず、去年はこのコロナ騒ぎで行けなかったからな」
――この時期に、船からこれだけ釣れているってことは、今年はかなり期待できそうですが…。
「この間、船長も電話で『今年は接岸も早そうだし、間違いなく期待できると思うけど、それまでにコロナ禍が収まっているとは思えんしねぇ…』って言っていた」
――ですよね。間もなくワクチン投与も始まるそうですから、それに期待するしかないですね。
「まあな。そこに期待するしかないよな」
――まだ3カ月あるんですから、諦めるのは早いですよ。
「そうだな。もう2年も行っていないし、今年こそはと思っているんだが…」
――期待して待ちましょうよ。
「そうだな。行ける状況になったら、ぜひ行きましょうと、父君に伝えておいてくれ」
――はい。分かりました。