【竿々学々】
――師匠、明けましておめでとうございます。去年はコロナウイルス騒動で大変な年でしたが、春にはワクチン接種も始まるそうですから、それに期待したいですね。
「本当だな。ひどい年だったな。70年近く生きて“最悪の年”と言っても過言ではないだろうな。今年は、何よりもワクチンがうまく機能してくれることを願わずにはいられないな」
――おしゃる通りですね。父も師匠も高齢者ですから本当に心配なんですよ。真面目に気を付けて下さいよ。
「ああ、ありがとう。ところで初釣りはどうする」
――実は、父からそのことを師匠に聞いてこいって言われてきたんですよ。
「去年は例年行っている釣りにほとんど行けていなかったからな。初釣りくらいはきちんと行きたいよな。父君は海と川のどちらがいいと言っていた?」
――師匠に任せるそうです。ただ、今シーズンはコロナの影響もあって、まだタナゴ釣りにまともに行っていないから、できればタナゴ釣りに行きたいようでしたね。
「確かにな。俺もほとんど行けていないからな。2021年の初釣りはタナゴ釣りにしようか」
――どこかいい場所があるんですか?
「ああ。いつだったかお前を連れて行った、埼玉県の綾瀬川上流がいいと思う。今シーズン、仲間が何回か行っているんだが、そこそこの釣果をあげていると聞いている」
――綾瀬川上流って川の中に葦(アシ)や真菰(マコモ)が生い茂っているところでしたよね。
「ああ、その通りだ。川幅は狭いけど点々とポイントがあるから結構な人数が入ることができる。この間、行ってきた仲間の話ではいい型のタナゴのオスも釣れたそうだ」
――いいですね。わが家の水槽のタナゴも少し減ってきちゃったんで補充したかったんですよ。きれいなオスのタナゴを釣りたいですね。
「俺と父君は、何と言っても“1円玉”だな。22、23ミリは何匹か釣っているんだが、どうしても20ミリ以下が釣れない。そろそろ何とかしたいものだな」
――父も同じことを言っていましたよ。『今年は、何としても“1円玉”を釣りたい』って。
「よ~し、今年の初釣りはタナゴで決まりだな。父君の都合を聞いておいてくれ」
――はい。分かりました。