【竿々学々】
――師匠、外房・片貝沖のハナダイが好調だって聞いたんですが、どうなんですか。
「おお、ここにきて群れが固まってきたようでよく釣れている。30匹を超える釣果も挙がっているからな」
――最近は、ハナダイ専門の船って少なくなっちゃいましたよね。片貝港は貴重な存在ですね。
「ああ、確かにな。その昔は、ハナダイといえば銚子外川沖・犬若モダリと言われ、年末になれば乗り切れないほどの釣り人が行っていたものだがな」
――犬若モダリの話は、父からも聞いたことがあります。12月の25日過ぎになると、毎日、夕方には船が席取りのクーラーボックスで埋まっていたそうですね。
「みんな、正月用の尾頭付きが釣りたくて出かけたってわけだ」
――マダイは、家族の人数分を釣るのは難しいけど、ハナダイなら全員分を釣れるってことですよね。
「そういうことだ。あの頃(1980年代)は、サイズはともかく、束釣り(100匹以上)も珍しくなかったからな」
――その後、徐々に釣れなくなってしまったそうですね。
「最大の理由は、職漁船の底曳網による乱獲だと思うが、1990年代には、釣り物としての犬若モダリのハナダイは消滅しちまったな」
――一時は、銚子外川のお隣の飯岡港からハナダイ船が出ていましたけど、一つテンヤ・マダイが盛んになって専門船は出なくなりましたよね。
「おお、その通りだ。今じゃ、片貝港だけが、外房地区では唯一のハナダイ専門の船を出している港になっちまったな」
――父に聞いたんですが、今シーズンは全般に型がいいようですね。
「おお、20センチ以下のサイズも入るが、30~35、36センチのマダイと間違えそうないい型も結構交じっているからな」
――大型のハナダイで作った“鯛飯”はおいしいですよね。
「おお、分かっているな。俺の個人的な感想だが、“鯛飯”に関しては、マダイよりもハナダイの方がうまいと思っている。ただし、30センチを超えるサイズじゃなきゃダメだがな」
――へえ~、父も同じことを言っていました。間もなく年末じゃないですか。お正月用の尾頭付きと“鯛飯”用の大型を狙ってハナダイ釣りに行きましょうよ。
「おお、片貝の船宿にもしばらく行っていないから出かけてみるか」
――ええ、行きましょう。
「それじゃ、父君の都合を聞いておいてくれ」
――はい。分かりました。