2020.10.17 05:00

【甘口辛口】寺山修司が無敗3冠に立ち会っていたらどんな言葉をつづったのか

【甘口辛口】

寺山修司が無敗3冠に立ち会っていたらどんな言葉をつづったのか

 ■10月17日 競馬を愛した作家、寺山修司は無敗の3冠馬を見たことがない。シンボリルドルフが史上初の快挙を成し遂げる前年に亡くなったから。彼がルドルフやディープインパクトの無敗3冠に立ち会っていたらどんな言葉をつづったのか。

 寺山のエッセーにヒントとなりそうな一文がある。〈「みんなはシンザンが勝つと思っているのではなくて、シンザンに勝ってほしいと思っているのではないか?」なんだかそんな気がする。この安定ムードの、無気力な時代に、人たちは忽然(こつぜん)とあらわれるヒーローを待望している。(中略)もっと超人的な指導者が出現することによって、われわれの運命が一変させられることを、心のどこかで待ち望んでいるのだ。〉(「シンザンを必要とする時代」)

 この秋2頭の競走馬が歴史的偉業に挑む。デアリングタクトはあしたの秋華賞で史上初の無敗牝馬3冠、コントレイルは来週の菊花賞で史上3頭目の無敗3冠を狙う。スポーツ紙が大きく扱うのは「このコロナ禍の時代に、人たちは忽然とあらわれるヒーローを待望している」からか。

 われわれが「無敗」という響きに魅せられるのは、その達成が困難を極めるからだろう。プロ野球新記録の開幕投手13連勝を決めた巨人の菅野も次の登板で無敗でなくなった。勝ち続ける存在はまさにヒーローだ。

 〈私はシンザン、大鵬、ジャイアンツ……といった安定株に身をまかせたがる小市民ムードというやつには、どうしても共感できがたい〉と寺山は先のエッセーに書いた。生きていたら、シンザンの1965年秋の天皇賞のように「くたばれ、無敗2冠馬」といった気概で秋華賞と菊花賞に臨んだのだろうか。(鈴木学)