2020.3.21 05:00

【甘口辛口】五輪はもう「しのぐ」時期ではない 延期と決めたら守りから転じ、攻めに徹して進んでいくべきだ

【甘口辛口】

五輪はもう「しのぐ」時期ではない 延期と決めたら守りから転じ、攻めに徹して進んでいくべきだ

 ■3月21日 作家、色川武大の『うらおもて人生録』に「しのぐ」の意味を記した文章がある。「とりたてて攻めるんでもない。守りにまわるんでもない。いわば、にらみあって一線を維持している恰好(かっこう)なんだ」。人生はしのいでいくことだともいえるくらいだ、とも。「攻めや守りに徹しなければならない大戦争はそれほどひんぱんにはないからね」

 本当の戦争を体験したことはないが、新型コロナウイルスのパンデミックが起きている今は、戦争の真っただ中といえる。実際、フランスのマクロン大統領は「われわれは(ウイルスとの)戦争状態にある」と強調した。特効薬ができるまでは、守りに徹しなければならない。

 とはいえ、守りばかりでは全てが停滞する。東京五輪もしかり。IOCの発表によると全体の43%の五輪出場選手が決まっていないのに、五輪代表選考会のほとんどが中止になっている。コロナが来月にも終息するという奇跡でも起きない限り、4カ月後に安倍首相の言う「完全な形」で本番を迎えられるとは到底思えない。

 「人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証しとして、完全な形で実施することで一致した」という安倍首相の発言は先進7カ国(G7)の首脳による緊急テレビ電話会議後に出た。「完全な形」とは、各国から競技者と観客が訪れて五輪が開催されることだろう。

 時期について明言を避けたので、日本政府が延期にかじを切ったと小欄は捉えた。IOCや都知事が否定しているのは、延期に向けての水面下での調整がまだついていないからだろう。五輪に関してはもうしのぐ時期ではない。延期と決めたら守りから転じ、攻めに徹して進んでいくべきだ。 (鈴木学)