2020.3.17 05:00

【甘口辛口】多くの犠牲払って開いた春場所、当初の目的の半分は達成?休校中の子供たちが面白さ見直す、新しい発見も

【甘口辛口】

多くの犠牲払って開いた春場所、当初の目的の半分は達成?休校中の子供たちが面白さ見直す、新しい発見も

 ■3月17日 無観客の春場所は後半戦に入って、にわかに緊張感が高まったようだ。39・7度の高熱を発し中日15日から休場した西前頭15枚目の千代丸の熱は、16日には40度に上がりPCR検査を受けたという。蜂窩織(ほうかしき)炎も疑われるが、力士に一人でもコロナウイルスの感染者が出れば即中止の方針になっている。

 リスク覚悟で迎えた場所。初日は、さすがにしわぶきひとつ聞こえないような館内の異様な雰囲気に戸惑う力士が多かった。仕切りで気持ちが高められないまま立ったのか一方的な相撲が目立ったが、日を追って行司が「残った、残った」と何度も声をかける攻防のある相撲が見られるようになった。

 力士が雰囲気に慣れたのか。「いや何日取っても慣れる雰囲気でない」とサンケイスポーツ評論家の藤島親方(元大関武双山)。「力士は土俵の相手に加え、ウイルスとの戦いでいつもの倍は神経をすり減らしている。本当に大変な場所だ」。もちろん力士は宿舎と相撲場の往復のみで繁華街の出入りなど論外。ストレスもたまる一方だろう。

 力士もさることながら、静寂の中でストレートに声が伝わる行司や呼出しも“土俵の演出家”としていつも以上に神経を使うだろう。呼び上げの節回し、声の張りや通りなど歓声が邪魔しないだけに隠しようもない。「この行司、こんないい声だったのか」と新しい発見もあった。

 学校の休校で子供たちが中継を見て「相撲は面白い」と見直されたという。国民があらゆる娯楽を奪われたこの時期、協会は多くの犠牲を払って場所を開いた。その姿勢は評価できる。万が一、中止になったら力士の落胆は計り知れないが、当初の目的の半分は達したのではないか。 (今村忠)