2020.3.10 05:00

【甘口辛口】心技体に加え豊かな想像力も必須 無観客でもテレビ桟敷は“満員御礼”

【甘口辛口】

心技体に加え豊かな想像力も必須 無観客でもテレビ桟敷は“満員御礼”

無観客で行われる幕下の取り組み

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 ■3月10日 無観客、無反応…。寂とした春場所の土俵で一番聞きたいのは行司の「残った、残った」のかけ声だろう。両力士が動かないときは発気揚揚を意味する「ハッキヨイ」、技をかけている場合は「頑張って土俵に残れ」と「残った」と声をかける。両力士が技を掛け合い、館内を沸かせ激しい攻防こそ「残った」の連呼になる。

 異例尽くめの態勢で開幕した春場所初日。幕内の土俵では、行司が声をかける間もない一方的な相撲が多かった。観客の声援で自らを鼓舞する仕切り時間4分の使い方が、今までと全く違い、気持ちを整理できないまま立ってなすすべなく敗れた力士も多かったようだ。

 大関貴景勝の「当たり前のように感じていたけど、どれだけお客さんに力をいただいているのか分かった」という言葉がすべてだろう。御嶽海に敗れた炎鵬は「闘争心が湧かなかった。何のために戦うのか見つけられなかった」と話した。観客の声援を支えとして奮い立つ小兵力士にとっては厳しい場所になりそうだ。

 昭和20年夏場所。空襲で屋根が壊れた旧両国国技館の晴天7日間無観客開催では途中から雨の日があり、雨が漏って招かれた傷病軍人が傘をさして観戦したという悲しい逸話が残る。75年後の無観客も寂しく味気ないが、初日の視聴率は15・1%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。見える桟敷は無人でも見えないテレビ桟敷は“満員御礼”だった。

 「お客さんがいるイメージで歓声を想像した」と大関を目指す朝乃山。心技体に加え今場所は豊かな想像力も必須だ。行司に「残った、残った」と何度も言わせ、最後は軍配に迷う「行司泣かせ」の攻防を一番でも多く見せてもらいたい。(今村忠)