2019.11.21 05:00

【甘口辛口】藤井聡太七段、棋聖戦が史上最年少タイトル挑戦記録更新最後の機会 荒波にもまれ本物の勝負師に

【甘口辛口】

藤井聡太七段、棋聖戦が史上最年少タイトル挑戦記録更新最後の機会 荒波にもまれ本物の勝負師に

 ■11月21日 今度こそ勝つだろう、と小欄もひそかに期待していた。史上最年少タイトル挑戦に王手をかけた将棋の藤井聡太七段(17)。しかし、その王将戦挑戦者決定リーグ最終戦で広瀬章人竜王(32)に126手で敗れ、1989年に当時17歳10カ月の屋敷伸之九段が棋聖に挑戦した記録の更新は成らなかった。

 広瀬竜王は昨年の朝日杯で勝った相手で、防衛を目指す竜王戦では挑戦者の豊島将之名人にいきなり3連敗し窮地に追い込まれている。そんな流れから将棋界の節目の勝負として「藤井の勝ち」と大方が予想したのも無理ないが、二転三転の末、最後は藤井が自玉の詰みを見落として敗れた。

 藤井は昨年度の順位戦のC級1組で8連勝しながら、近藤誠五段に敗れたことが響いてB級2組への昇級を逃した。鮮烈デビューで期待は膨らんだが、29連勝した相手の若手集団の後にしたたかなプロ軍団が控えていた。その中でも勝率が高くランキングなら確実に5位以内には入るだろうが、「ここが急所」という対局で勝てない。

 「大学を首席で卒業し、会社に入って“きみなら”と任された大仕事がなかなかうまくいかないような感じ」とある棋士。将棋には「勝負」と「将棋」の二面性がある。相手が嫌がる所を徹底的についたのが「勝負の鬼」大山康晴なら、遠大な構想の下に将棋を作ったのが「新手一生」の升田幸三だが、勝負では大山に勝てなかった。

 「藤井さんは本来その両面に通じるものを持っているはず」と前出の棋士。荒波にもまれながら、ひと皮もふた皮もむけて本物の勝負師になる。現在2次予選準決勝まで進出している棋聖戦が記録更新の最後の機会。また首を長くして待とう。 (今村忠)