2019.11.5 05:00

【甘口辛口】錦の御旗の前にはレガシーもヘチマもないらしい 再開発で消える神宮第二球場

【甘口辛口】

錦の御旗の前にはレガシーもヘチマもないらしい 再開発で消える神宮第二球場

 ■11月5日 秋の日差しに誘われ先週末の土曜日、久しぶりに神宮球場に早慶戦を見に行った。JR千駄ケ谷駅から外観がほぼ完成した新国立競技場の威容に圧倒されながら向かっていると、手前の神宮第二球場から大歓声が…。そういえば第二の高校野球も翌日の3日で最後になるとかで、見納めにと入ってみた。

 秋季東京都大会の準々決勝でスタンドはほぼ満席。ふだんは一塁側に121打席あるゴルフ練習場で、外野席はなく高さ48メートルの防球ネットで囲われたユニークな球場だ。滞空時間の長い本塁打でファンを魅了した田淵幸一氏(元阪神など)が、法政一高3年のとき左中間ネット中段に突き刺し驚かせこともあった。

 小欄も夏の大会をよく取材した。「ここまできたら“次は隣(神宮)で準決勝だ”と気合が入る」。東京の球児にとって神宮は2つでセットの聖地でもあった。その第二球場も東京五輪に伴う神宮外苑地区再開発で消える。神宮球場と秩父宮ラグビー場も建て替えられ、第二の跡地は入れ替わりでラグビー場になるという。

 終戦直後の混乱期に早慶明など大学のラグビー部OBが資金を集め、部員がモッコを担いで土盛りから始め作られたのが秩父宮。東京六大学の寄付金などで大正15年に完成したのが神宮球場。何も場所まで変えなくても…と思うが、五輪、再開発という錦の御旗の前にはレガシーもヘチマもないらしい。

 規制緩和で再開発地区には商業施設やホテルが入る高層ビルが建てられ、緑豊かな外苑の風景も一変するだろう。ファンそれぞれに思い入れがあっても事業者にとっては絶好の開発地域でしかない。好天が誘っても、高層ビル群が見下ろす外苑では足は遠のきそうだ。 (今村忠)