2019.10.12 05:00

【甘口辛口】ノーベル化学賞の吉野氏が語った好奇心の大切さ 子供の手助けも大人の務め

【甘口辛口】

ノーベル化学賞の吉野氏が語った好奇心の大切さ 子供の手助けも大人の務め

 ■10月12日 大好きな考古学に没頭した大学時代、土の中にばかり目を向けていたわけではない。考古学サークルの交流会で一緒になった別の大学の女子学生に猛アタック。一生の伴侶にした。ノーベル化学賞を受賞した吉野彰・旭化成名誉フェロー(71)である。

 妻の久美子さん(71)とは今も週末、テニスを楽しむという。世の熟年離婚とは無縁のようだ。吉野氏は携帯電話やパソコンに使われるリチウムイオン電池の開発者。その功績を鼻にかける素ぶりもなく、人としての幅を感じる。カラオケでよく歌うのは中島みゆきの「糸」や「時代」だという。

 みゆきは独自の世界を築き上げ、広く世の人々を楽しませてきた。研究者にも同様の独自性とあきらめない心が必要というのが吉野哲学。研究に行き詰まっているとき、大掃除で見つけた外国の資料がリチウムイオン電池の開発につながった。そこに、きれいごとではない強い執念を感じる。

 常に好奇心のアンテナを張る吉野氏は、将来の日本を担う子供たちにも「好奇心を持って、いろんなことに関心を持って経験すれば、必ずノーベル賞は取れる」と呼びかけた。くしくも、日本人初のノーベル賞受賞者の理論物理学者、故湯川秀樹氏も「科学研究は人間の知的好奇心に基づく創造であって、芸術やその他の文化活動と同じものだ」という名言を残している。

 将来、ノーベル賞を取れそうな分野は、それこそいま日本列島に迫り来る台風の根絶や地震予知、あるいは、がんの特効薬などたくさんある。好きこそものの上手なれ-が基本だが、子供が好奇心を燃やせる手助けをするのも、大人の務め。虐待や仲間うちでいじめをしている場合ではない。 (森岡真一郎)