2019.7.20 05:00

【甘口辛口】京アニ放火事件はアニメ界に対するテロ 文化の成熟と正反対の凶行が悔しくてならない

【甘口辛口】

京アニ放火事件はアニメ界に対するテロ 文化の成熟と正反対の凶行が悔しくてならない

 ■7月20日 燃えさかる炎と黒煙の中、どんなに熱く苦しく、耐え難い恐怖に襲われたことだろう。屋上へ逃げ場を求め、悲しみと絶望の中で折り重なるように、日本アニメの担い手が30人以上も亡くなった。ガソリンをまかれた火や煙の回りが早く、逃げ切れなかったとみられる。

 京都・伏見区にあるアニメ制作会社「京都アニメーション」のスタジオで18日に起きた放火事件。これから先、何年も何十年もアニメを通じてファンに感動や喜び、勇気を届け続けたろうに…。独自の世界を築こうと、犠牲者は日々、情熱を注いでいたに違いない。その無念を思うと胸が張り裂けそうだ。

 京アニの名称で親しまれる同社は、女子高の軽音部を舞台にした大ヒット作「けいおん!」で楽器を演奏する指の動きなど、細部にもこだわった美しい映像で知られる。アニメ界に対するテロとも言える今回の暴挙。犠牲者の魂に報い二度と同様の事件を起こさぬためにも、犯人の詳しい動機や真実の一刻も早い解明が待たれる。

 偶然だが、放送中のNHK連続テレビ小説「なつぞら」は現在、昭和30年代草創期のアニメ制作会社が舞台。アニメーターとして働くヒロインがさまざまな苦難や葛藤を乗り越え、周囲に支えられて生きる姿が共感を呼んでいる。19日の放送では、育ての祖父の優しい後ろ姿を正義の怪物の動きに生かす様子が描かれた。

 それだけに、アニメファンでなくとも、京アニの放火事件を身近に感じる人も多いのではないか。わずかな救いは、国内だけでなく海外からも犠牲者を追悼し再建を願う支援の輪が広がっていることだ。アニメ文化の成熟とは正反対の凶悪な犯行が悔しくてならない。(森岡真一郎)