2018.11.17 05:00

【甘口辛口】大ヒット曲の見当たらない今年 平成最後の紅白では人間味あふれる歌唱を期待

【甘口辛口】

大ヒット曲の見当たらない今年 平成最後の紅白では人間味あふれる歌唱を期待

 ■11月17日 大みそかのNHK紅白歌合戦の出場歌手が発表された14日、日本を代表するジャズピアニストの一人、佐山雅弘さんが胃がんのため、ひっそりと息を引き取った。64歳だった。故忌野清志郎さんの歌う「ヒム・フォー・ノーバディ」など、他分野の歌手ともコラボして数々の名曲を生んだ。

 作・編曲家としても超一流。黒縁眼鏡をかけ、少し歯の出たとぼけた笑顔が魅力だった。流麗で情熱的な美しい旋律は、多くの人の心をとらえ感動を呼んできた。紅白でも過去、由紀さおり(70)らのバックで何度か演奏。フジテレビ系「ニュースJAPAN」でのレギュラー演奏をご記憶の方も多いだろう。

 ヘビースモーカーだった佐山さんは4年前、スキルス性胃がんを発症。腸などに転移して壮絶な闘病を続けながらも、今年7月には新作アルバムを発表したばかり。旺盛なチャレンジ精神と大人の遊び心は健在だった。公式HPには今、死期を覚悟した生前のメッセージが寄せられている。

 冒頭で「このお手紙がお手元に届く時、僕はこの世におりません」と書き出し、「ジャズとの出会いで、楽しさこの上ない人生を送ってしまいました」と述懐。「まことに人生は出会いであります。僕という者は僕が出会った人々で出来ているのだとしみじみ実感したことです」などと、短くも感謝の思いがあふれている。

 限りある自らの命が幕を閉じるのを前に、悲しみをみじんも感じさせない。独特のぬくもりと音楽性は、とかく人工的なものがあふれる現代を超える。ひるがえって、大ヒット曲の見当たらない今年。平成最後の紅白はせめて、出場歌手の人間味あふれる歌唱を一人でも多く期待したいものだ。 (森岡真一郎)