2018.11.11 05:00

【甘口辛口】温暖化進み自然が牙むく中…オゾン層回復は国際協調の成果

【甘口辛口】

温暖化進み自然が牙むく中…オゾン層回復は国際協調の成果

 ■11月11日 5年ほど前になる。コンサートが終わってフェニーチェ劇場のロビーを出ると、ビニール製の大きなブーツを抱えた子供たちが近づいてきた。けっこうな値段がついたそれは、革靴の上からはける長靴。劇場の外は、さっき普通に歩けた道が見渡す限り水没していた。スーツ姿でテラテラの青い長靴を履き、ジャブジャブ水をはねる写真がベネチア旅行の思い出だ。

 イタリアを襲った悪天候の映像は、米中間選挙よりよっぽど衝撃的で、痛ましいニュースだった。地盤沈下による浸水に悩まされてきた水の都ベネチアは、高潮で市内の75%が浸水。10月27日から今月5日までに土砂崩れや洪水により全土で32人が亡くなった。

 西日本豪雨や地震、相次ぐ台風の悪夢が生々しい日本にとって、ひとごとではない光景がそこにあった。北部ベネト州では強風で約1400万本の木が倒れ、ダム湖を流木が埋め尽くした。隣のトレンティーノ・アルトアディジェ州では20%の木が倒れた。

 同地域で産出するスプルース(マツの一種)は、バイオリンなどの楽器の表側に使われている。あのストラディバリウスをはじめ、さまざまな名器を生んだ森が元に戻るのに、「100年かかる」(当局者)とか。悪天候の原因は、例年より約5度も高い地中海の水温だそうだ。温暖化が進む中、自然は年ごとに新たな牙をむく。

 そんな中で7日、有害な紫外線を遮るオゾン層が回復しているとの報告が出た。モントリオール議定書に基づくフロンガスの排出規制が進み、2060年代には破壊が深刻になる前の水準まで戻るという。国際協調の成果。やればできる。そう思えるニュースなど、いつ以来のことだろうか。 (親谷誠司)