2018.11.9 05:00

【甘口辛口】稀勢の里と重なるオグリキャップ 強さともろさのギャップがファンを魅了

【甘口辛口】

稀勢の里と重なるオグリキャップ 強さともろさのギャップがファンを魅了

 ■11月9日 稀勢の里はなぜファンに愛されるのか。元相撲記者と飲んだとき、その話になった。横綱昇進後、負けても会場から座布団が飛ぶことは少ない。観客は固唾をのんで祈るように取組を見守る。勝てば安堵(あんど)のため息をついて喜び、負けたら落胆のため息をつく。

 白鵬や鶴竜が負ければ座布団が飛ぶのは当たり前。元記者は「白鵬はプロレスで言うヒール(悪役)で、稀勢の里はそれに立ち向かう善玉だから。変化しないのも好感度を高めている」と説く。なるほど、横綱になってから立ち合いで変化したのを見たことがない。白鵬のように肘打ちまがいのかち上げもしない。ファンが求める「これぞ相撲」を体現している。

 「技巧的でなく、相撲ぶりが不器用なのも愛される理由」。ばか正直に正攻法を貫くから格下に負ける。「でも負けても言い訳しないし勝っても寡黙。昔ながらの力士像がファンの心をくすぐる」と元記者。

 稀勢の里を見て思い出すのは、平成初期に一大競馬ブームを築いたオグリキャップ。そのアイドルホースも勝ちっ放しではなかった。中央に移籍して重賞6連勝を決めたが、その後は勝ったり負けたり。強い競馬のあとでコロッと負けたり連続大敗後の引退レースで復活を果たしたり、強さともろさが同居。このギャップがファンを魅了した。そこが稀勢の里と重なる。

 左腕と左胸の大けがを押して優勝した昨年の春場所以降は低迷が続いた。ファンはそれをおもんぱかって温かく見守っていたところもあるだろう。だが先場所を10勝5敗で乗り切り、優勝を目標に掲げた今場所(11日初日)はファンの目も厳しくなるはず。負けたら座布団が飛ぶのを覚悟したほうがいい。 (鈴木学)