2018.10.23 05:00

【甘口辛口】四つんばいで繋いだたすきは「安全配慮義務違反」? 駅伝のあり方、見つめ直して

【甘口辛口】

四つんばいで繋いだたすきは「安全配慮義務違反」? 駅伝のあり方、見つめ直して

 ■10月23日 中高年のサラリーマンなら、体調が悪くて会社を休みたいのに「はってでも出てこい」と上司に一喝された経験があるかもしれない。このご時世、そんな業務命令を出したら企業は「安全配慮義務違反」に問われる可能性もあるとか。場合によっては労働者側が損害賠償を請求できるというから冗談でもいえない。

 21日の全日本実業団女子駅伝予選会(プリンセス駅伝)をテレビで見ていたら、本当に「はってでも」中継所にたどりついた選手がいたのは驚いた。初出場の岩谷産業の2区を走った飯田怜(19)で中継所手前300メートルで他の選手と接触し転倒。右脛(けい)骨を骨折しながら残りを四つんばいで進み、たすきをつないだ。

 さすがに監督は途中棄権を申し入れたが、審判に伝わったのが残り20メートルほどだったため制止しなかったという。飯田の両膝は血で染まり道路の白線にも点々と血の痕が残った。搬送先の病院での診断は全治3~4カ月。痛みに耐え、たすきを渡した責任感の強さには打たれたが、今後の競技人生はもっと大事だ。

 駅伝は本人か監督の申し出がないと棄権できないとはいえ、時と場合による。立っての前進が明らかに不可能になった時点で独自に判断して止めるのが審判の役目だ。この大会では3区で脱水症状を起こした選手が大きくふらついてコースを逆走。対向選手にぶつかりそうになり最後は倒れ込んで棄権した。

 四つんばいも逆走も初めて見たが、また起こる可能性もありその時点での失格をルールで明文化すべきではないか。同時に指導者たちはここまで選手を精神的に追い詰める駅伝のあり方を見つめ直し、それこそ「安全配慮義務」を守ってほしいものだ。(今村忠)