2018.10.1 05:00

【甘口辛口】所持金280円で逮捕の樋田容疑者 腹立たしく情けない小物の姿

【甘口辛口】

所持金280円で逮捕の樋田容疑者 腹立たしく情けない小物の姿

逮捕された樋田容疑者=30日午後(大阪府警提供)

逮捕された樋田容疑者=30日午後(大阪府警提供)【拡大】

 ■10月1日 この春、鉄格子や高い塀のない愛媛の作業刑務所から脱走し22日間の逃亡の末逮捕された男に先日、松山地裁が懲役4年(求刑同6年)を言い渡した。この平尾龍磨被告(27)の捕物劇は何度もテレビで流れ逃走するスピードといい、学校の塀を乗り越えようとしたときのジャンプ力といい“瞬発系”の逃走犯に見えた。

 そこへいくと大阪・富田林署から逃走し、48日ぶりに山口・周南市で身柄を確保された樋田淳也容疑者(30)は“持久系”だ。道の駅で万引しようとしたのが運の尽きだったが、釣り竿や傘など多くの荷物を積んだスポーツタイプの自転車で360キロもの逃避行にはそれなりの脚力が必要だろう。

 警備の“原点”ともいうべき接見室から逃げられた末、「どうせすぐ捕まる」と甘く見た警察の初動の大失敗が、ここまで身柄確保を長引かせた。途中から互いに素性の知らない自転車男と行動をともにしたそうだが、食料品を万引しようとした道の駅では女性警備員の機転が逮捕に結びついた。警察は最後までその影さえつかめなかった。

 江戸時代の怪盗鬼あざみは江戸の町でたくみに追手をすり抜け役人を翻弄し、その姿を庶民が陰で応援した。東京・豊島区の雑司ケ谷霊園にある鬼あざみの墓は、あやかって入試をすり抜けようという受験生でシーズンはにぎわうとか。樋田容疑者も大阪、神戸、広島といった大都市をすり抜けて山口にたどりついたのかもしれない。

 確たる当てもなく逃げ出し所持金280円でのゴール…。動員された警察官の延べ人数や、税金から投入され億単位になるであろう捜査費用を思うと鬼あざみどころか、あまりにも腹立たしく情けない小物の姿だった。 (今村忠)