2018.8.11 05:00

【甘口辛口】「奇跡的に脳のがん消えた」大林監督を支えた夫人 生きている身近な存在こそ大事にしたい

【甘口辛口】

「奇跡的に脳のがん消えた」大林監督を支えた夫人 生きている身近な存在こそ大事にしたい

大林宣彦監督

大林宣彦監督【拡大】

 ■8月11日 30年ほど前になる。記者の父が胃がんのため、主治医から家族に「余命半年」と告げられた。ほどなくして脳に転移。意識を失い、手のほどこしようがなかった。父は数日後に息を引き取ったが、以来、脳への転移イコール死と思い込んでいた。ところが9日、うれしい奇跡を聞いた。

 映画「さびしんぼう」や「ふたり」などの名作で知られる旧知の大林宣彦監督(80)にインタビューしたときだった。監督は2016年8月、肺がんで余命3カ月と告知されたが、抗がん剤で患部が縮小。今も体調は良く、故郷の広島・尾道市で新作映画の撮影に日々励んでいるが、「実は昨年3月、脳に転移したんだよ」と突然、告白したのだ。

 「えっ、本当ですか」と思わず緊張する記者に、「転移はした。でも、東京の私大病院で放射線治療を受けたら、奇跡的に脳のがんは消えた」とうれしそう。記者の父のときを思い起こせば、医学は長足の進歩を遂げた。体調に気をつけ、傑作を生んでほしい。

 そんな監督を陰で支えるのが、プロデューサーも務める夫人、恭子さん(80)だ。医学もしかりだが、彼女の存在は大きい。普段は監督の食事も作り、体が冷えないよう部屋の温度調節にも気を配る。温厚で品があり、撮影現場でも出演者やスタッフが安全に取り組めるよう、また、おなかを空かしていないかなど目配りを怠らない。

 リアリズムを追求し、時にピリピリする撮影現場。その中で母親のような存在だ。お盆の時期、先祖代々のお墓参りも大事だが、誰のおかげで元気でいられるのか。久々に恭子さんに接して、生きている身近な存在こそ大事にしたいものだと我が身を振り返った。 (森岡真一郎)