2018.8.3 05:00

【甘口辛口】野村萬斎の目指す東京五輪開会式は「鎮魂と再生」を掲げたどの世代にも分かりやすい式典に

【甘口辛口】

野村萬斎の目指す東京五輪開会式は「鎮魂と再生」を掲げたどの世代にも分かりやすい式典に

20年東京五輪・パラリンピックの開閉会式の総合統括を務める狂言師の野村萬斎(中央)、五輪担当の映画監督の山崎貴氏(左)、パラ担当のクリエーティブディレクターの佐々木宏氏

20年東京五輪・パラリンピックの開閉会式の総合統括を務める狂言師の野村萬斎(中央)、五輪担当の映画監督の山崎貴氏(左)、パラ担当のクリエーティブディレクターの佐々木宏氏【拡大】

 ■8月3日 「あれは誘導尋問。羽生結弦を開会式に出したいのは、話題を作りたい記者のほうでしょう」。ひいきの居酒屋の店主がつぶやいた。2020年東京五輪・パラリンピックの開閉会式を企画、演出する総合統括に決まった狂言師、野村萬斎の会見についてだ。主演映画「陰陽師」のテーマ曲を羽生がフリープログラムに使ったので、2大会連続の五輪金メダリストが式典に登場する可能性について質問が出た。

 萬斎は「それは当日のお楽しみということで」と余裕の笑顔で受け流した。羽生は国民栄誉賞も受けただけに十分ありそうだが、店主の不満はそれだけではないようだ。「野村萬斎といえば、世の中のパパとママは『にほんごであそぼ』です」。

 なるほど小さな子を持つ親にとって、NHKの子供向け言語バラエティーのほうがなじみ深い。子供たちの間で流行した、戯曲「まちがいの狂言」からの一節「ややこしや」は小欄もよく覚えている。今回の大役就任は「陰陽師」より「にほんごであそぼ」が決め手になったかもしれない。

 しかも東京五輪の大会理念は、東日本大震災からの「復興五輪」。古典芸能の伝承者は「鎮魂と再生は能狂言など芸能の重要な部分。その精神を生かすことが復興五輪にとって意味がある」と話す。思えば、大ヒットした映画「シン・ゴジラ」の主役の動きは野村萬斎のそれを取り入れたもの。東京を破壊した萬斎ゴジラは「3・11」の暗喩(あんゆ)といわれるだけに、「鎮魂と再生」を掲げたのは意味深長だ。

 「シンプルかつ和の精神に富んだ五輪になるよう」と萬斎。まさに適任。「ややこしや」とは正反対の、どの世代にも分かりやすい式典になりそうだ。 (鈴木学)