2018.7.19 05:00

【甘口辛口】羽生永世七冠が演出する世代交代…1棋士1冠時代で群雄割拠

【甘口辛口】

羽生永世七冠が演出する世代交代…1棋士1冠時代で群雄割拠

 ■7月19日 8つあるタイトルを8人の棋士が1冠ずつ保持することになって、将棋界はまさに戦国模様だ。17日のヒューリック杯棋聖戦第5局で挑戦者の豊島将之八段が、羽生善治棋聖に108手で勝ち通算3勝2敗として初タイトルを獲得した。敗れた羽生棋聖は竜王1冠だけとなり、タイトル通算100期獲得はお預けになった。

 七大タイトル時代の1987年に7人が分け合って以来、31年ぶりの1棋士1冠。羽生永世7冠といえども、タイトル戦のすべてに集中することは難しいようだ。昨年末に渡辺明前竜王からタイトルを奪回し、永世竜王の資格を獲得。A級順位戦の6人によるプレーオフを制しての名人戦挑戦と激闘が続いていた。

 『不世出の大名人』といわれた大山康晴十五世名人は還暦を過ぎてもタイトル獲得に執念を燃やし、69歳で亡くなるまで順位戦のA級を守り抜いた。翻って47歳の羽生は昨年王位、王座の2冠を立て続けに失った。菅井竜也王位(26)、中村太地王座(30)と若い棋士に名をなさしめた。そして棋聖戦は28歳の豊島に…。

 『永世竜王』を必死の形相で取りにいった昨年の竜王戦のような、すさまじい集中力も棋聖戦では感じられなかった。ある高段棋士が言った。「羽生先生はタイトルにしがみつくより、世代交代の波を肌で感じ若手の力をうまく引き出そうとしている。豊島八段も一番得意な形で戦えた。手を抜くことでは決してなく世代交代を上手に演出している」。

 豊島新棋聖は関西『若手四天王』の一人だが、タイトル戦は過去4回挑戦してはねのけられている。「タイトルを取ると負け出す」というジンクスを羽生のためにも打ち破り大きく育ってもらいたい。 (今村忠)