2018.2.18 05:00

【甘口辛口】「SEIMEI」選曲した羽生の胸中に思いをはせると連覇の味わいも深まる

【甘口辛口】

「SEIMEI」選曲した羽生の胸中に思いをはせると連覇の味わいも深まる

 ■2月18日 還暦前の男が不覚にも涙ぐむほど、平昌五輪フィギュアスケート男子のフリーは胸に迫った。ドラマのようにスリリングな筋書きと、申し分のないキャストたち。表情や細かいしぐさから伝わる緊張感、歓喜と落胆、充実感と安堵。現地観戦して歴史的瞬間を共有できた皆さんがうらやましかった。

 フィギュアと他の多くの競技との違いはその密室性だろう。SPなら約2分40秒、フリーなら約4分30秒の間、選手と、その選手が選んだ音楽が会場にいる全員の目と耳を独り占めする。金メダルの羽生結弦は、その舞台で自分の世界を作り上げる能力で他を圧していた。まるで陰陽師が張る「結界」のように江陵アイスアリーナを支配した。

 フリーでの使用曲「SEIMEI」は2001年公開の映画「陰陽師」のサントラ曲。主人公の安倍晴明は平安期の陰陽師として知られる。「大鏡」「今昔物語」などの古典でエピソードが語られ、今も映画や小説、漫画、ゲームで大活躍する日本史上屈指のヒーローだ。

 選曲した羽生の胸中に思いをはせると、連覇の味わいはより深まる。晴明死去から2年後の1007年、一条天皇の命で屋敷跡に創建された晴明神社(京都市)には、この日も多くの羽生ファンが足を運んだ。一方、晴明生誕の地とされる大阪市阿倍野区にも安倍晴明神社がある。

 同じ1007年創建ながら、こちらはこぢんまりした森の中のお宮。聖地巡礼の熱心なファンが訪れるが、今は熊野参詣で栄えた近くの別の神社の末社となっている。ちなみにその神社の名は「阿倍王子神社」。晴明から王子へ。金メダルのお礼に参拝するには絶好のコースかもしれない。 (親谷誠司)