2017.2.8 05:00

【甘口辛口】混迷の中で舵取りを託された佐藤康九段…“緻密流”の手腕を見せて

【甘口辛口】

混迷の中で舵取りを託された佐藤康九段…“緻密流”の手腕を見せて

■2月8日

 「1秒間に1億と3手読む」といわれるのが将棋の佐藤康光九段だ。もちろん誇張だが、それほど読みが深く「緻密流」とも呼ばれる。その佐藤九段が日本将棋連盟の新会長になった。コンピューターソフト不正使用疑惑をめぐる騒動で辞任した谷川浩司九段の後任に、6日の臨時総会と理事会で選ばれた。

 結果的には三浦弘行九段の疑惑は晴れたが、混乱に拍車をかけた連盟の対応のまずさに批判が集まり将棋界は大ピンチに陥った。誰がなっても新会長は「火中の栗」を拾わなければならない。羽生善治三冠の待望論もあったが「将棋界の切り札に、わずらわしいことをさせてはいけない」との声が強かったという。

 47歳の新会長は昭和62年にプロ入りした「羽生世代」の一人で、ライバル羽生三冠との数々の名勝負はファンを楽しませた。史上9人目の通算1000勝まであと9勝。その大物が損な役回りを受けた。「当面あやまり役になる。それでも、自ら矢面に立って将棋界を守ろうという姿勢には感謝しかない」とある棋士はいう。

 将棋界では急速に発展したコンピューターソフトとの棋戦など、大きな収入につながるIT企業との結びつきが進んでいる。一方で、棋士の間では「タイトル戦を主催する各新聞社は連盟が赤字のときも支え文化として守ってくれた。世話になった新聞社を軽視する風潮はよくない」と“拝金主義”批判の声も強いという。

 新会長は東日本大震災後、棋士会長としてチャリティー活動の先頭に立ち将棋を通じ人と人とのつながりを実感したという。「義を重んじる人」とも聞いた。盤をはさんで戦う「士」(もののふ)のトップとしての気概に期待したい。 (今村忠)