2016.12.29 05:00

【甘口辛口】将棋ソフト不正使用疑惑の三浦九段には「李下に冠を正さず」をかみしめてもらいたい

【甘口辛口】

将棋ソフト不正使用疑惑の三浦九段には「李下に冠を正さず」をかみしめてもらいたい

■12月29日

 「李下に冠を正さず」という。スモモ(李)の下で曲がった冠を直そうとして手を上げると、実を盗っていると疑われる。誤解を招くような行動は慎むべきという戒めだ。ソフト不正使用疑惑で年内の出場停止処分を受けている将棋の三浦弘行九段(42)には、このことわざをかみしめてもらいたい。

 日本将棋連盟の第三者調査委員会は三浦九段のスマートフォンやパソコンを解析し、対戦棋士へヒアリングした結果「不正の証拠なし」との結論を出した。不正の根拠の一つだった対局中の30分以上の長い離席もなかったという。疑惑は晴れたが、ここまで大ごとになったのは誤解を招くような行動があったことも一因だろう。

 それでも連盟は「つらい思いをさせた」と謝罪し、出場停止中の不戦敗対局は「不戦局」扱いとして来期もA級の地位を保証した。高額賞金の竜王戦の挑戦権を取り上げられたことへの補償も考慮される。三浦九段の“全面勝訴”だが、ある高段棋士は「連盟が何とか丸く収めた感じですっきりしない」と話す。

 「元の状態に戻してほしい」と三浦九段は会見で訴えた。騒動前のようにふつうに指せる環境を、という意味のようだが「彼とはやりたくない」という棋士も多いとか。前のように「仲間」として指せるか、それとも「異分子」と意識するか。「こればかりはやってみないとわからない」と高段棋士は首をひねった。

 加藤一二三九段(76)と史上最年少プロ藤井聡太四段(14)の、世代を超えた対局が世間を和ませた将棋界。その直後に、どう転んでも後味が悪い騒動の決着で“ご用納め”とは皮肉だが、棋士は気持ちを切り替えて新年の対局に臨んでほしいものだ。 (今村忠)