2016.11.16 05:00

【甘口辛口】羽生がソフトに敗れたら“神話”崩壊…将棋叡王戦での敗退に関係者は安堵?

【甘口辛口】

羽生がソフトに敗れたら“神話”崩壊…将棋叡王戦での敗退に関係者は安堵?

■11月16日

 将棋界はこの敗戦を、さぞ複雑な思いで受け止めたろう。羽生善治三冠(王位、王座、棋聖)が佐藤天彦名人に敗れた、14日の叡王戦本戦準決勝。優勝者が将棋ソフトの代表「PONANZA」との第2期電王戦二番勝負で人間の代表として戦うことになるが、これで羽生三冠とソフトの初対決は先送りとなった。

 今春の第1期電王戦はソフトが山崎隆之叡王(八段)に2局とも圧勝。年々異常なほど進化し、高段棋士もお手上げというソフトの強さを改めて見せつけられた。46歳の羽生三冠は「打倒ソフト」へ向け叡王戦に自らの意思でエントリーし、準決勝までの勝ちっぷりには並々ならぬ意気込みを感じさせたという。

 「力が残っている間に指してみたい、という気持ちはわかる」とある棋士は言う。人間の“本丸”として「羽生なら何とかしてくれる」と夢を託したファンも多かったろう。しかし、ソフトと相まみえる前に、今春の名人戦でタイトルを奪い去った新世代の佐藤名人に返り討ちされたのは皮肉でもあった。

 将棋界では三浦弘行九段が対局中に不自然な離席を繰り返し、ソフトを不正使用した疑惑で大騒動になった。三浦九段は年内の出場停止処分を受け、「不正使用はない」と反論文書を提出。その後事態の進展はないが、棋士の間ではソフト利用は「悪」とのイメージさえ広がっているという。

 「棋士はコンピューターに頼らなくても勝てる」。羽生三冠は電王戦で勝ってそう言いたかったのか。しかし、七冠独占など史上最強といわれた羽生が敗れたら「人間が強い」との“神話”は完全に崩壊する。「これでよかった」と関係者は案外ホッとしているかもしれない。(今村忠)