2016.4.19 05:00

【甘口辛口】歴史が繰り返した『あらしのボートレース』 事故の危険と背中合わせに「中止が妥当」の声も

【甘口辛口】

歴史が繰り返した『あらしのボートレース』 事故の危険と背中合わせに「中止が妥当」の声も

■4月19日

 『あらしのボートレース』という実話が、1960年代に小学校6年生の国語教科書に取り上げられた。慶大艇が沈没した57年の早慶レガッタ。二つ玉低気圧の影響で雨に加え隅田川には大きな波が立った。エイトのうち2人がアルミ缶で水のかい出しに徹し6人で漕いだ早大艇は何とかゴールし、慶大艇はコース半ばで沈没した。

 「全員がオールから手を離さず漕ぎ続ける」のが慶大なら、「何としても艇を目的地につける」のが早大。それぞれのオアズマンシップを貫いた結果だった。「歴史は繰り返す」で59年後、17日の同レガッタでは逆に早大艇が沈没し3750メートルのコースを漕ぎ抜けた慶大の勝ちとなった。

 低気圧の急速な発達で全国で強風が吹き荒れた同日は、東京都内でもビル工事の足場が相次いで倒れ交通機関も混乱した。早慶レガッタでは対校エイトに先立つ中学生、教職員などのレースを中止。第2エイトでは競技前にスタッフの乗ったボートが強風で傾き転覆し、2人が川に落ちて救助されている。

 1905年に始まり、春の風物詩として多くの人が集まる伝統の一戦。簡単に中止にはできなかったのだろうが、観戦した早大OBはこう話した。「隅田川のレースは満潮と干潮で波も変わり判断は難しいとはいえ、見たことのない強風で漕げる状態ではなかった。気持ちはわかるが、中止が妥当だったのでは」。

 59年前は早大側が「真の勝利ではない。再レースを」と申し入れ、慶大側が「早大の勝利は正しい。沈没したわれわれが悪い」と固辞した。これが美談として教科書になった。しかし、事故の危険と背中合わせの『あらしのボートレース』そのものは賛同しかねる。 (今村忠)