2015.11.13 05:00

【甘口辛口】「日本の騎手はまだまだダメ」 “美しくない騎乗”が横行する現状

【甘口辛口】

「日本の騎手はまだまだダメ」 “美しくない騎乗”が横行する現状

■11月13日

 中山競馬場近くにある故野平祐二元調教師の自宅は「野平サロン」と呼ばれていた。競馬が開催される日曜日には、レースが終わると佐野洋、山口瞳、寺山修司、虫明亜呂無、本田靖春、大橋巨泉ら作家や文化人、馬主や騎手が集まって競馬談議に花を咲かせたからだ。

 そんな野平サロンの様子を岡部幸雄元騎手と週刊ギャロップ初代編集長の芹澤邦雄さんが8日、東京競馬場のJRA競馬博物館のイベントで語った。「玄関は来客の靴であふれていた。野平邸に呼ばれるのが夢で、声が掛かったのは騎手になって10年」と岡部さん。芹澤さんは「長手綱でもリズムをつかんで馬とコンタクトを取れるのが一流の騎手、と祐ちゃんは話していた」。

 「“祐ちゃんの長手綱”と最初に書いたのは自分。祐ちゃんが乗ると、馬が興奮しないし行きたがらない」とは、イベントにビデオ出演した大橋巨泉さん。それについて岡部さんは「長手綱ではあるけれど、手綱がぶらんぶらんではない。『きれいに乗って、きれいに勝て』と言われた」。

 今のレースを見ていると、「美しく乗ろう」と思っている騎手は少数派のようだ。直線で馬を追っているときも手綱はぶらんぶらん。ダンスみたいに馬上でお尻を上下にトントンさせて追っている騎手が多い。

 野平さんの薫陶を受けた故後藤浩輝騎手は「“お尻トントン”はムチと同じように刺激を受けるから馬が動くけど、腰が悪くなるなど馬への負担が大きい。なにより美しくない」と批判的だった。

 “美しくない騎乗”が横行している現状に対し野平さんは、9日に急死した芹澤さんとともに「日本の騎手はまだまだダメ」と天国で嘆いていることだろう。 (鈴木学)

(紙面から)