2015.3.1 05:00

【甘口辛口】「自分を苦しめすぎた」後藤騎手…冥福と家族の幸せを祈る

■3月1日

 春は桜並木が美しい東京・下北沢の遊歩道。その脇の世田谷区立代沢小の校庭にかつて教員を務め、戦後は無頼派作家として「堕落論」などを書いた故坂口安吾の文学碑がある。いつもは何気なく通り過ぎてしまうが、その文言に改めて足が止まった。「人間の尊さは自分を苦しめるところにある」-。安吾の著書の中の一節だ。

 中央競馬のスター、後藤浩輝騎手が、首つり自殺とみられる衝撃的な死を遂げて一夜明けた2月28日朝。安吾の文言を見ながら、後藤騎手は自分を苦しめ過ぎたのではないかとふと思った。競馬界の人脈に頼らず、「ステッキ1本で道を開く」と米国修業した一匹狼。何度も落馬事故を起こしてけがを繰り返し、人知れず体は悲鳴を上げていたのではないか。

 きょう1日も中山競馬場で騎乗予定だったという。アツくなりやすい面もあり、過去には後輩騎手を木刀で殴った事件を起こした。しかし、そんな無頼派の面は最近すっかり影をひそめ、テレビの競馬番組やバラエティー、競馬関連イベントにも積極的に出演。明るく快活な笑顔で競馬ファンの増加にも貢献していた。

 しかも、フジテレビ系「みんなのKEIBA」の優木まおみが言うように、「親身になって話を聞いてくれる知的で優しい人でした」という。その一端は一昨年の3月27日に誕生したまな娘、珠々(しゅしゅ)ちゃんのことを報告するブログで、親友の幼子の死を悼む思いを切々とつづった文章にも垣間見られた。

 不惑とはいえ、享年40は若すぎる。一競馬ファンの小欄も、馬券予想に迷ったときには頼りにした。お疲れさまでした。ありがとう。そして、もうすぐ2歳の珠々ちゃんに幸あれ。 (森岡真一郎)

(紙面から)