2014.11.22 05:00

【甘口辛口】高倉健さん、安らかに…寂しさはDVDを見て紛らわすしか

■11月22日

 仕事柄、スターと呼ばれる人とは数多く出会った。野球界では村山実、田淵幸一、江夏豊、掛布雅之、野茂英雄…。彼らにはグラウンドで見せる顔と、私生活で見せる別の顔があった。私生活の時は、ひとりの夫であったり、子供の親であったり。リラックスしている表情を見ると、取材する側もほのぼのとした気分になった。

 83歳で天命を終えた俳優の高倉健さん。死去のニュースが流れた後、さまざまな関係者が「高倉健」を語り、涙を流す人もいた。文化勲章を授与されたこと。映画のロケ中にあった、大スターとは思えないような細かな気配りや、手紙や花束を贈られた思い出。死亡説が流された後、感情を押し殺して会見する姿…。どれもこれもが格好良く、人格も備わった渋い二枚目俳優だった。

 主演している映画は何本も見た。「八甲田山」「幸福の黄色いハンカチ」「鉄道員(ぽっぽや)」。なかでも大好きだったのは「夜叉」。覚醒剤中毒の亭主に苦悩する女のために単身ミナミに乗り込む。一件落着の後、漁船に乗って荒波に向かう健さんがサングラスをかけるシーンは何度見ても「渋い! かっこいい」と涙が出る。

 亡くなって初めて本名を知った。「高倉健」の本名は小田剛一という。1931年2月16日、福岡県中間市で生まれた。大学を卒業後、映画プロデューサーにスカウトされて俳優になった。大スターへの道を歩む中で、私生活のことはベールに包まれていた。公の場に出れば、周囲の見る目は「高倉健」。小田剛一は私生活でも「高倉健」を演じなければならなかった。さぞかし疲れたでしょう。安らかにお眠りください。寂しさはDVDを見て紛らわすしかありません…。 (植村徹也)

(紙面から)