2014.11.19 05:00

【甘口辛口】定年迎える呼出し・秀男、演歌で鍛えた名調子を聞けるのもあと4日

■11月19日

 大相撲の結びの一番を呼び上げる立呼出しの秀男(本名・山木秀人)が九州場所千秋楽を最後に定年退職する。場所後の12月28日が65歳の誕生日。「やっていることは同じでも、いつもの場所と違う感じがする」と、一日一日を心に刻みながら呼び上げを務めている。昭和44年春場所が初土俵で、45年の土俵人生だった。

 静岡県下田市生まれで進学校の下田北高(現下田高)時代は英語が得意で英語劇に出たほど。中学校長だった父親は大学進学を望んでいたが、新聞で「呼出しが定員不足」の記事を読み「これだ」と思ったという。「大学は学園紛争で荒れていたし、もともと相撲が好きだったから」と父親を説き伏せて入門した。

 いまは呼出しも給料が安定し十両格以上は番付に名前が載る。当時は給料も安く協会が黙認する形で呼出しだけで館内に売店を出したり、ミニチュアの櫓(やぐら)や横綱作製などで副収入を得た。「裏方は名誉を取るなら行司、おコメを取るなら呼出し」ともいわれた。そんな昔かたぎの世界に生きた呼出しとしては秀男が最後だろう。

 多岐にわたる呼出しの仕事のうちメーンの呼び上げは楽譜もなく、それこそ十人十色。秀男の枯れた節回しのベースには演歌があるという。「カラオケでは歌うのはド演歌ばかり。いまどきの曲しか歌わない若い呼出したちには笑われるけど、演歌の味のある節回しはいい手本になった」。

 旧伊勢ケ浜部屋に入門して、いまは朝日山部屋所属で、一門の横綱白鵬の成長を間近で見てきた。千秋楽結びの一番で白鵬を呼び上げるのも「これ以上ない幸せな巡り合わせ。32回目の優勝なら最高だね」。玄人受けする名調子が聞かれるのもあと4日…。 (今村忠)

(紙面から)