2014.11.10 05:00

【甘口辛口】賛否あった羽生の強行出場…コーチだけでなく連盟もストップかけられなかったか

■11月10日

 見るたびに「選手同士ぶつかるんじゃないか」と、ひやひやさせられるのがフィギュアスケートの直前練習だ。国際規格で幅30メートル×長さ60メートルと、リンクは狭い。そこで6分間、6人ずつ練習する。6分間で選手は最後のイメージ作りに集中し、他の選手の動きにまではなかなか気が回らないだろう。

 GPシリーズ中国杯(上海)で起きた羽生結弦と中国選手の衝突は、9日朝のテレビで何度もビデオで流れたが、そのたびに目を背けたくなるような光景だった。ラグビーのように相手が当たってくることが予測できれば身構えられるが、まったくの出合い頭。互いに吹っ飛ぶほどの衝撃で羽生は頭とあごを負傷した。

 流血した頭に包帯をグルグル巻きし、あごにテープをつけて再登場。本番では冒頭から4回転ジャンプを立て続けに失敗するなど、足元はおぼつかなく計5度も転倒しながらなんとか2位になった。さすがにソチ五輪金メダリストの意地といいたいが、美を競うフィギュアでの包帯やテープは違和感がありすぎた。

 「演技したい」という本人の意志の強さは称賛される。しかし、リンクにあおむけに倒れ脳振とうも疑われただけに周囲が引き留めるべきではなかったか。オーサー・コーチは「いまはヒーローになる時ではない」と諭したそうだが、「現場にいたスケート連盟のしかるべき立場の人たちは何をしていたのか」と首をひねる関係者もいた。

 引退した高橋大輔に代わる連盟の“米びつ”が羽生でもある。スポンサーや日本から大挙やってきたファンに気を使ったわけでもないだろうが、羽生の将来を思えば連盟として棄権の決断を下しても文句は出なかったのではないか。 (今村忠)

(紙面から)