2014.11.8 05:00

【甘口辛口】技術と戦略の引き出し多い錦織…魅せるテニスで世界の頂点へ

■11月8日

 もう20年以上、近所のクラブで週1回ラケットを振ってきたテニス愛好家の端くれである。おしゃれな老若男女でにぎわったバブルの時代は遠く、高齢化と少子化、不況でコートに立つ人は減る一方。それが最近、復活の兆しを感じる。言わずと知れた錦織効果。久しぶりにラケットを手にしてみようと思った人が少なからずいる。

 全米オープン準優勝、世界ランク5位という信じられない結果の数々は、同じ日本人として涙が出るほどうれしい。そしてそれ以上に、錦織という選手がコートで実現しているプレーのひとつひとつが、“現役”の琴線に触れるのである。

 たとえばジョコビッチやA・マリーは驚異の守備力で粘り、カウンターを狙う。強いけれどいささか退屈だ。ラオニッチらビッグサーバーの試合はエース合戦で大味。錦織の試合は、ストロークから自ら仕掛けていく。フォアの豪打から絶妙のロブやドロップショットまで、多彩で楽しい。自分の子供にまねさせたいテニス。頭脳的で魅力的なテニスで勝っていることが、誇らしい。

 今年、錦織は最終セットでの圧倒的な強さで話題になった。“鉄人”と呼ばれ、確かに体は頑健になったが、スタミナで圧倒したわけではない。技術と戦略の引き出しが多いから、戦いながら相手の攻略法をまとめ上げ、最終セットで答えを出すのにたけているのだ。

 9日からのATPツアー・ファイナルは、ぜひ1試合を通して見ることをお勧めする。ベースラインで打ち合っていた錦織が、ラインより中に入って打ち始めたら、相手をつかんだサイン。ボールの上がりっぱなを打つ天下一品のライジングに、きっと相手はついてこられない。 (親谷誠司)

(紙面から)