2014.4.6 05:00

【甘口辛口】蟹江敬三さん、不断の努力を続けた人生に心から拍手

■4月6日 

 元気な高齢者が多い咋今、69歳の死は早過ぎる。俳優、蟹江敬三さんだ。半世紀近くにわたって活躍、晩年は味のある渋い演技が光った。昨年のNHK朝ドラ「あまちゃん」で演じたヒロインの祖父は、一見コワモテだが愛きょうのある豪放磊落(らいらく)な性格で、大いに親しみを感じたものだ。

 昨年12月初め、蟹江さんの出演ドラマの会見を取材したことがある。今年3月から放送されたNHK BSプレミアム「下町ボブスレー」。東京の町工場がソチ五輪出場を目指す日本の五輪チームのためにボブスレーを作る実話を基にした物語で、蟹江さんは一流の旋盤職人を演じた。

 その会見で蟹江さんは「日本の技術はものすごい勢いで進歩している。旋盤を扱う場面が多いので、旋盤指導を受けながら、すごい技術を持っている人のように見せたい」と語った。「役は作るものではなく、なるものだ」が信念だっただけに、静かな口調の中にも確かな自信をみなぎらせていた。

 実際、蟹江さんは10代のころはエンジニア志望で当初、工業高校に進学した。このドラマを演じるにあたり、そのころを思い出していたのかもしれない。しかし、人生の転機はどこで迎えるか分からない。高2のときに出演した卒業生歓送会で、学校生活をパロディーにした芝居の先生役を演じ、大いにウケて目覚めた。

 本来は引っ込み思案だったが、俳優こそ天職とエンジニアの夢は断念。普通高校の都立新宿高校に転入し、俳優の道を進んだ。その後は演出家、蜷川幸雄氏の厳しい指導で成長したのは周知のとおり。一瞬の機会をとらえて自分に合うものを見つけ、不断の努力を続けた人生に心からの拍手を送りたい。(森岡真一郎)

(紙面から)