2013.12.29 05:00

【甘口辛口】励まされた気分になった岸部四郎の「イエスタデイ」

■12月29日

 ビートルズの名曲「イエスタデイ」。耳に心地いいスローバラードとして有名だが、「トラブル」などの歌詞に人生の苦悩や困難がにじむ。病気療養中のタレント、岸部四郎が27日、かつて所属したザ・タイガースの再結成コンサートに出演。約2年ぶりのステージ復帰で、選曲・披露したのがこの歌だった。

 車いすに座ったまま歌い始めると、4万5000人で埋まった東京ドームは静寂に包まれた。意外にもと言っては失礼かもしれないが、歌い出しは往年の張りのある歌声だった。さすがに高音部分では声がかすれたが、兄の岸部一徳や沢田研二ら他のメンバーも唱和、演奏する中、フルコーラスを歌いきると万雷の拍手と歓声がわいた。

 うつろな表情にも笑顔が戻ったように見えた。この日は歌詞と自分の人生に照らし合わせてか、左の手のひらにマジックで「トラブル」と書き、振って見せる場面も。さらに「歌は僕が(メンバー中)一番へたくそだけど、魅惑の(ささやくような)ウィスパーボイスです」と冗談まじりに言ってみせた。

 約6億円の負債で1998年に自己破産。その後、50代で脳出血から視野狭さくになり、右足の大たい骨を骨折した。現在は歩行困難で介護保険施設に入院中だ。俳優やテレビ司会者として活躍したのも今は昔。07年には再婚した妻を43歳の若さで心臓発作で亡くしたとあって、「イエスタデイ」の歌詞は歌うたびに身にしみるに違いない。

 が、救いはユーモア精神の健在ぶり。仲間や一徳ら信頼できる親族もいる。まだ64歳。とかく後ろ向き志向だが、励まされた気分にもなった。できることから、また始めてほしい。どんな苦労もやがては昔話になるはずだ。 (森岡真一郎)

(紙面から)