2021.5.19 12:00

【球界ここだけの話(2328)】ロッテ・鳥谷敬が「鳥谷敬」を演じるのをやめた日

【球界ここだけの話(2328)】

ロッテ・鳥谷敬が「鳥谷敬」を演じるのをやめた日

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サンスポ記者の球界ここだけの話

 ロッテ移籍2年目、プロ18年目。今季の鳥谷敬内野手(39)は開幕スタメンにも名を連ね、安打数は早くも昨季(5本)を上回る。井口資仁監督(46)も「昨年と比べて、動きもスイングも全然違う」と評価。そこには新天地で身も心も生まれ変わった男の姿があった。

 「阪神では“野球選手・鳥谷敬”を演じなければならなかった。ロッテでは割と素の自分でやれている」

 移籍1年目を終えた昨オフに、鳥谷が明かした言葉。かつて巨人・長嶋茂雄終身名誉監督(85)が「“長嶋茂雄”を演じるのは、結構大変なんですよ」と吐露したとの逸話が残されているが、鳥谷もまた同様だった。スター選手、チームリーダーとしてファンの注目を浴び続けた阪神時代はあえて感情を押し殺してプレーしてきた。「決してクールな性格ではない」と自己分析する中で、これまでの呪縛から解き放たれたかのようなプレーを見せたのが、昨年8月20日のソフトバンク戦(ZOZOマリン)だった。

 2-4の延長10回2死からマーティンの2ランで同点に追いつくと、なお一、二塁から代打・佐藤へのフルカウントからの6球目が暴投。これを見て、代走で起用されていた二走・鳥谷が三塁ベースを蹴って一気に本塁突入。間一髪セーフでサヨナラ勝利をもぎ取った瞬間、鳥谷はヘッドスライディングの体勢のまま地面を手で何度もたたいて、喜びを爆発させた。

 「実は、(MLBを代表する遊撃手で、2020年7月29日に現役引退を表明した)メッツのホセ・レイエスに憧れていて、『いつか、自分もやりたい』と思っていたパフォーマンスだった」

 そう振り返った鳥谷。新天地で“仮面”を脱ぎ捨てたからこそ、実現したド派手なプレー。そういえば、虎の元エース、能見篤史投手(41)も今季から移籍したオリックスでは時折、派手なガッツポーズを披露。阪神時代は鳥谷同様にポーカーフェースが代名詞だったベテラン左腕は「阪神で長くやった人はみんなそうじゃないですか?やはり、置かれている環境ですよ」と話しているという。

 今月25日には交流戦が2年ぶりに開幕。25-27日は古巣との3連戦で、鳥谷が甲子園に戻ってくる。「思い出のたくさん詰まったチームを相手に、当然、甲子園で試合できることは楽しみ」。見慣れた甲子園への“里帰り”。ただ、今の鳥谷の目にはこれまでとは全く違う景色に映ることだろう。(東山貴実)