2020.11.10 07:30

【よみがえるノムラの金言】勝負事に「方程式」など存在しない

【よみがえるノムラの金言】

勝負事に「方程式」など存在しない

特集:
よみがえるノムラの金言

 2月11日に急逝した野村克也さん(享年84)は、サンケイスポーツ専属評論家として、勝負事の心得もよく説いていた。今回のテーマは、短期決戦での継投策。型にはまらず、臨機応変に-。 (構成・内井義隆)

 プロ野球では今週末からパ・リーグのクライマックスシリーズに、来週末からは日本シリーズに突入する。

 その「短期決戦」の戦い方で、ノムさんが苦言を呈したのは、2016年12月14日付の『ノムラのすべて』。

 取り上げたのは同年の日本シリーズ、広島-日本ハム。2勝2敗で迎えた10月27日の第5戦(札幌ドーム)。広島が一回に1点を先行。1-0のまま迎えた後半。

 「現在のプロ野球には、誤った選手起用がはびこっている」とタメ息を漏らしたのが、広島の継投策だった。

 先発のジョンソンが6回95球、無失点で降板。七回から今村、ジャクソン、中崎と1イニングずつ、3人を投入。その結果、七回に追いつかれ、九回にサヨナラ負けを喫している。

 「第1戦の先発から中4日のジョンソンが、自ら代えてほしいと申し出たという。七回以降のリレーも、レギュラーシーズン通りの順番。だから、緒方孝市監督は降板を許したのだろう」と、継投の背景を探りながら即座に断。

 「もう少し頑張ってくれと背中を押して、追いつかれるまで、もしくはせめてあと1イニング、続投させるべきだった」として、理由を挙げた。

 ローテーションの谷間の投手ならいざしらず、ジョンソンは安定感抜群の左のエース。中4日といっても、95球は決して多すぎる投球数ではない。しかも、1試合もおろそかにできない短期決戦。レギュラーシーズンとは戦い方も変わってくる-と説いた。

 さらに挙げたのが、投手交代の判断基準。

 〔1〕アクシデントに見舞われた〔2〕不調で立ち直る気配がない〔3〕目に見えて疲労している〔4〕次打者や次投手との信頼度-など。

 走者を置いた状況では(1)セットポジションとクイック投法がうまい投手に代える(2)バント処理を優先して守備のうまい投手に代える(3)1点勝負で犠飛も許されないため三振を取れる投手に代える-なども加わる。

 「それらを組み合わせ、臨機応変に判断するのが継投。最終回にストッパーを投入するのは当然として、そこに至るまでの継投が一定である必然性は、ない。短期決戦ではなおさらだ」と結論付けた。

 そして、金言。

 「いまはどのチームも、『勝利の方程式』通りに継投を行う傾向にある。しかし、そもそも勝負事に『方程式』など存在しないのである」

 ノムさんの持論では、監督の仕事で最も難しく、最も重要なのが投手交代。型にはまった継投だけでは、監督も必要ない。そう言いたげな表情でもあった。