2020.9.1 07:30

【よみがえるノムラの金言】野村克也氏「肩の力を抜け、と言っても無駄。膝をやわらかく使え」

【よみがえるノムラの金言】

野村克也氏「肩の力を抜け、と言っても無駄。膝をやわらかく使え」

特集:
よみがえるノムラの金言
さようなら 野村克也さん追悼
2015年10月28日の日本シリーズ第4戦。九回に空振り三振したヤクルト・雄平のスイングに“リキみ”を見た 

2015年10月28日の日本シリーズ第4戦。九回に空振り三振したヤクルト・雄平のスイングに“リキみ”を見た 【拡大】

 効果的なアドバイスとは-。2月11日に急逝した野村克也さん(享年84)が、専属評論家としてサンケイスポーツに残した言葉を振り返るヘリテージ(遺産)連載。2015年の日本シリーズでは、リキむ打者に向けて「肩の力を抜け、と言っても無駄」と語っていた。では、その場合の正解は? (構成・内井義隆)

 さっそく、補足させていただく。先週の当欄で原稿をこう、締めた。

 ご同輩、ひとつ、肩の力を抜いてみては-。

 ノムさんが南海で、捕手兼任監督を務めた体験談を基に、いわば開き直りの術を紹介した。

 投手陣は「監督の出すサインには首を振れませんけど、打たれたら監督の責任ですから、気は楽です」。ノムさんも「これで負けたら、俺を監督にした球団の責任だわい」。互いに開き直っていたから、思い切って勝負できた。仕事上、少し肩の力を抜いてみては…という意味で使った。

 この「肩の力を」も、試合中のアドバイスとしては適切とは限らない。ノムさんがそう教えてくれたのは、2015年10月28日の『ノムラの考え』。ヤクルト-ソフトバンクの日本シリーズ第4戦(神宮)だった。

 1勝2敗と形勢不利なヤクルトが、4-6とリードされて迎えた九回2死一、二塁。雄平外野手がサファテ投手のストレート、それも高めのボール球に手を出して、空振り三振に終わった。

 「長打なら同点。本塁打ならサヨナラ勝ち。打者がリキむのも無理はない」とノムさんも天を仰いでいる。

 しかも、サファテは193センチの長身から、155キロ超の速球を投げる力投型。このタイプが相手だと、投球フォームに合わせて、打者はますます力が入る、と解説。

 さらに、雄平はカウント2-1からも速球を3球、ファウル。その姿はまさにオーバースイング。明らかに肩に力が入りすぎ、と指摘。

 「こういうときこそ、あの言葉を思い出せ」と残念がった。

 実は、第1戦で武田翔太投手に2失点完投を許したとき、同じ現象を評論していたからだ。

 武田も186センチと長身で、ストレートと縦のカーブを真っ向から投げ下ろすタイプ。

 対してヤクルトは、畠山和洋内野手が打点王、山田哲人内野手が本塁打王、川端慎吾内野手が首位打者と、打撃タイトル独占の強力オーダー。

 それが悪い方に作用した。ストレートとカーブ主体というシンプルな組み立ても手伝って、気負いとリキみが先に立ち、強引に打ちにいき、凡打の山を築いている。

 その第1戦に続き、第4戦でも飛び出したのが今回の金言。ベンチから選手にかけるべき言葉とは-。

 「肩の力を抜け、と言っても無駄だ。それでは、ますますリキむ。膝をやわらかく使え。これが正解である」

 肩に意識が向かうと逆に、肩に余計力が入る。膝を使い、打撃フォームを脚から始動させることに集中すれば、自然と上半身からリキみが消え、体の回転でコンパクトにスイングできる。そうした原理だという。

 ヤクルトは結局、1勝4敗で日本一を逃した。

 さて、ご同輩。アドバイスや気の持ち方を、ちょっと変えると、違う世界が見えてくるかも。