2020.6.12 10:00

【よみがえるノムラの金言】野村克也氏「野球は8割が備えで決まる」

【よみがえるノムラの金言】

野村克也氏「野球は8割が備えで決まる」

特集:
よみがえるノムラの金言
さようなら 野村克也さん追悼
2015年7月11日の東京ドーム。藤浪(左手前)の投げたボールを捕手は後逸した

2015年7月11日の東京ドーム。藤浪(左手前)の投げたボールを捕手は後逸した【拡大】

 「6・19」まで、いよいよ1週間。2月11日に急逝した野村克也さん(享年84)も、待ち望んでいたはずのプロ野球開幕を迎える。そこで、今回の金言は2015年の評論『ノムラの考え』から。「野球は8割が備えで決まる」-。準備はOKですか?(構成・内井義隆)

 ノムさんはよく、「二段構え」「三段構え」の必要性を説いていた。

 主に、打者が甘い球を打ち損じたとき。「直球を狙う…」では不十分。「高めの球だけ」「バットを立てて」「コンパクトに振る」などと、心構えを重ねておくべし、と口を酸っぱくして語っていたものだ。

 それは何も、打撃に限った話ではない。

 「ここで改めて伝えておこう」とペンを執ったのが、15年7月11日の巨人-阪神(東京ドーム)、『ノムラの考え』だった。

 とっかかりは、阪神・藤浪晋太郎投手の失点。

 三回1死一、三塁。打席には坂本勇人内野手というピンチで、カウント1-1からのスライダーが外角へそれ、ワンバウンド。バックネットまで転がり、2点目を献上した。

 公式記録では「ワイルドピッチ(暴投)」のアナウンス。藤浪には常に、制球の不安がつきまとう。通常なら「ノーコン」の一言で片づけられるところ。

 ここでピシャリと異を唱えるのが、ノムさんのノムさんたるゆえん。

 「捕手出身の私に言わせれば実質、パスボール(捕逸)である」と、バッテリーを組んだ準主力の捕手に、評論の矛先を向けた。

 まず、走者は三塁。投球をうしろにそらせば失点するという状況で、低めスライダーのサインを出したこと。

 スライダーにしろ、フォークボールにしろ、低めの変化球はワンバウンドになる確率が高い。

 果たして、サインを出した時点で、「絶対、そらさない」との心構えがあったのか、と理詰めで問いかけた。

 「残念ながら、それは見えてこなかった」と、続けて解説したのが、捕球姿勢だった。

 両膝ごと外角へ移動し、両膝を地面につけ、ミットを下から出し、上半身に当ててでも、ボールを前に落とす。これが基本的な動き。

 その捕手は正反対で、内野手の逆シングルキャッチのように、ミットをはめた左手だけ外角の方へ出し、うしろにそらした、と指摘した。

 「それでは投手は、低めに投げにくい。やがては高めに浮き、最も危険な“半速球”と化す」と悪循環に言及。

 「だから私は現役時代、からだ全体で止める! 絶対にうしろにそらさない! 手加減して投げるな! と投手に宣言した」と回想し、「捕手には、その備えと覚悟がなくてはいけない」と結論付けた。

 そして、短くも、普遍的な金言。

 「野球は8割が、備えで決まる」

 どうだろう。「野球」の部分を、それぞれの仕事に置き換えても、通じる話だと思う。

 もちろん、19日に開幕を控えるプロ野球も、同様。「備えと覚悟」が、試される。

ノムラの考え

 本紙専属評論家の野村克也さんが、野球理論から人生観までを歯に衣(きぬ)着せぬ直言で説く連載企画。本紙初評論は1967年10月19日掲載の大阪版。「ノムさん観戦記」と題し、同年の日本シリーズ(巨人-阪急)を現役捕手の視点から評論。現役引退後も的確な解説を行い、原稿で取り上げられた選手のロッカーに、記事の切り抜きが張り出されたこともあった。野球ノート「野村の考へ(え)」は、息子の克則氏(現楽天作戦コーチ)のために書き上げた教科書だった。2019年10月24日掲載の日本シリーズ第4戦の評論を最後に幕を閉じた。

  • これで巨人に追加点。記録は藤浪の暴投だったが、ノムさんは捕手の準備不足を指摘した