2019.9.4 12:00

【G戦士の素顔(15)】昨季のドラ1右腕・鍬原の現在地 2つの収穫得た実りある2年目

【G戦士の素顔(15)】

昨季のドラ1右腕・鍬原の現在地 2つの収穫得た実りある2年目

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川崎市のジャイアンツ球場で練習する鍬原

川崎市のジャイアンツ球場で練習する鍬原【拡大】

 昨季のドラ1右腕は、照りつける太陽の下で必死に汗を流している。鍬原拓也投手(23)は2年目の今季、リリーフに転向した。だが、5月末に1軍に今季初昇格するも、11試合に登板し0勝1敗、2ホールド、防御率4・30の成績で7月11日に出場選手登録を抹消されて以降はファームでの調整が続いている。

 「中継ぎをやってみて、まだ1年間じゃないですけど、中継ぎには中継ぎにしか分からない難しさを感じているところですね。先発は先発で難しいですけど、違う意味で難しいところがいっぱいあります」

 同じ投手だが、役割が違うだけで調整法も大きく変わる。それぞれの役割があり、難しさがあるため、自身のベストな調整法を見つけるのも難しい。「気づいたら疲れがたまっているとか。ケアをしていても、予想以上に肩が張ったりとか。先発で5回以上投げたら、絶対に肩がしんどいじゃないですか。中継ぎは『1回、2回だったら、まだなんとかいけるんじゃないか』と思っていた。それが何度も続いて、いつのまにか全然スピードが出ないし、スライダーの切れが悪くなるし。『なんでだろうなあ』とやっているうちに全然結果もついてこなかったです」。

 リリーフの難しさについてこう口にした鍬原。だが、そんな新たなポジションに挑戦した今季、2つの大きな収穫があった。一つ目は、まさに調整と関係あるコンディションについてだ。

 「やっぱり中継ぎも先発もそうですけど、野球やるうえでコンディションってすごく大事だなと思いました。コンディションさえ整っていれば、自分の思ったようにボールが投げられますし。それをどこかしら気にしていて投げていると絶対に駄目なので」

 シーズンは143試合。常に最高のコンディションを保つのは至難の業だ。だが、ベストでなくても、ベターな状態を保つことができれば、いいパフォーマンスは生まれてくるだろう。

 鍬原にとって疲れがたまり始めるのが、6月下旬頃からだという。ルーキーイヤーの昨季も5月31日に初登板先発を果たし、6月14日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)で初勝利。だが、その後は勝ち星を挙げられなかった。

 「そのときは感じないですけど、いま映像とか見てもあの時期が一番、ボールの勢いとか、コントロールとか切れが全体的に落ちていた感じはありました。去年もその時期にボールがいっていないような感じだった。毎年その時期に疲れが来るなら、少し前にトレーニングを入れてもいいのかなと思いました。もう一回上げるというか。一回トレーニングとかを入れて、体を補強したりするのがいいのかなと」

 さらに、コンディションを保つために重要視し始めたのが睡眠だ。現在は一人暮らしをしている鍬原。自宅では、就寝前に必ず湯船につかるのが日課だ。「のぼせる。長風呂は無理」ということで、38度とぬるめのお湯で汗が出てくるまでつかるという。体温が下がるとともに入眠できるよう、就寝前にはスマートフォンを触らない。真っ暗にした部屋の中で、ベッドの下のコンセントにスマートフォンを充電し、就寝する。

 「睡眠を長くしてから、状態がいい。最低8時間以上は寝ないと駄目ですね。朝7時に起きるのであれば、最低でも11時には寝る。寝られそうであれば、9時半、10時ぐらいには寝る」と鍬原。コンディションを保ち続けるのは困難だが、いい状態を維持できるよう努めている。

 そして、もう一つの収穫は「スライダー」だ。鍬原と言えば150キロ前後の直球とシンカーが武器だが、「スライダーで結構カウントを取れたり、三振を取れたりしてきている。そしたら、ピッチングの内容とか結果も上がってきて。自分の中でも投球の幅が広がったなと感じます」と手応えを感じている。

 8月中旬の2軍戦で、左打者に対して外角のスライダーでストライクを取り、内角直球でカウントを有利にし、外角のシンカーで空振り三振に取ったことがあった。その映像を見返した際に「『なんでこんなボール球を振るんやろ』と思ったんですけど、周りに聞いてみたら、外のスライダーの残像が残っているからだと。スライダーってシンカーを引き立てる効果もあるし、外のスライダーを張っていたら、内に行ける。スライダーでカウント取れたらめっちゃ幅が広がる」と感じたという。

 1年目の昨季、エース・菅野に言われた言葉がある。『一流のピッチャーはスライダーがいいから』。菅野もしかり、米大リーグで活躍する日本人選手もそれぞれ武器はあるが、スライダーをしっかりと扱えている。『スライダーを極めていいピッチャーになれ』という菅野からの言葉を胸に、必死に磨いてきた球種でもあった。現在は、その菅野のスライダーに近い、ツーシームを投げるような握りで、やや手首を傾けて投げているという。

 2年目の今季、1軍ではなかなか結果を残せていない。だが、得たものは間違いなくある。ベストなパフォーマンスを披露するその日を、牙を磨き、待つだけだ。(赤尾裕希)

  • 川崎市のジャイアンツ球場で練習する鍬原
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