【球界ここだけの話(1510)】
ハワイ自主トレでキャッチボールをする菅野【拡大】
灼熱の太陽の下、巨人のエースは黙々と汗を流している。巨人・菅野智之投手(29)にとって毎年恒例のハワイ自主トレ。約1カ月という期間で、いろいろな取り組みをして、強化を図る。そして、なによりも重視しているのがコンディショニングだ。
「やっぱり一番は、コンディショニング。コンディショニングさえ整えておけば、勝ち星はそうだし、実力に見合った成績を残せると思う。200イニングも10完投も達成できると思いますし。そういう意味では、(昨年)12月からやる意味をしっかり考える。こんなに早く始動している選手って、なかなかいないと思うから。充実した時間を過ごせているなあと思います」
コンディショニングを整えることこそ、アスリートにとって最も重要で、最も難しいことだろう。体を動かす以上、好不調の波があり、どこかを痛めてけがをすることもある。そして、それが悪化して選手生命を絶たれるということも少なくない。
そんな中、日本のエースである菅野は、大きな故障もなく、常に圧倒的な数字を残し続けている。昨年11月にはへんとうの手術を受けた。なかなか食事も思うようにいかず「6キロぐらい痩せちゃった」と振り返るほど、過酷な日々も送った。だが、ハワイ自主トレでは、体幹を中心としたメニューや約70メートルのキャッチボールなど、かなり強度を高めた練習をしていた。手術を受けた直後ではあったが、自身の体と相談し、シーズンに向けて、万全なコンディショニング作りをしているのだ。
「ずっと『体心技』ですね」
スポーツや武道ではよく「心技体」という言葉を耳にする。だが、菅野は「体」があってこその「心」であり「技」であると考えている。
「技術はね、あとから付いてくるよ。だって体に異常があったら、技術なんて磨けないでしょ。元気な体があるからこそ、元気なメンタルもついてくるし、技術も磨けるし。というふうに常に思っている」
1年間「心」を保つことも、「技」を最高レベルに持っていくことも、もちろん難しい。だが、「体」が万全でなければ、その2つは成り立たない。もちろん、試合に敗れたり、思うような投球ができないときもあり、「心」に不安を抱えるときもあるだろう。だが、そこは「技」の充実、何よりも「体」の充実で解消できるのだろう。だからこそ、アスリートにとって最大の資本である「体」、コンディショニングの部分を、菅野はつきつめて、常に最高の状態にしておこうと考えているのだ。
昨年は開幕から自身2連敗を喫し「一番コンディションがよくなかった」と振り返るように苦しいスタートとなった。だが、菅野はこうも振り返る。
「あのスタートがないほうが良かったと思うけど、あったからこそ、最終的にいい結果が残せたと思う。毎年コンディショニングというのはテーマに掲げているけど、去年のシーズンというのはすごく、本当の意味で体と対話しながらできたシーズンじゃないかなと。だからこそ、あれだけ夏場に成績を残すこともできたし。抜群の状態じゃなかったかもしれないですけど、4月の初めに得た教訓だったり、経験というのが生きてきた、生かすことができたという達成感。そういう手応えがあったということですね」
昨年の成績は言わずもがな、圧倒的なものだったが、改めて振り返る。28試合に登板し、15勝、防御率2・14、200奪三振でセ・リーグの投手主要3冠(最多勝、最優秀防御率、最多奪三振)のタイトルを総なめ。10完投、202イニング、勝率・652で全7項目クリアでの沢村賞受賞にも輝いた。シーズンのスタートは確かに苦しいものだった。だが、そこから自分の体を見つめ治し、コンディショニングを整え、レギュラーシーズン最後は3試合連続完封。クライマックス・シリーズでは史上初のノーヒットノーランも達成したのだ。
今シーズンは、「20勝」と「2年連続全項目クリアでの沢村賞」を目標に掲げている菅野。そのためにも大事なオフ期間に、ハワイで充実した日々を送っていた。何よりもコンディショニング。常に自身の体をいい状態に持っていく。投球ももちろんだが、最も難しいことをしっかりと行っている菅野のすごさに改めて驚きを感じたとともに、今年の活躍も期待せずにはいられなくなった。(赤尾裕希)