2013.1.15 05:02(4/4ページ)

桑田ら救った!ジョーブ医師のゴッドハンド

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 ★ニュージャージーでジョン氏に聞く

 左肘の内側には約25センチの手術痕が残っていた。ドジャースやヤンキースなど6球団26シーズンで通算288勝231敗を記録したジョン氏には、米ニュージャージー州北部の高級ゴルフリゾートで会った。

 「大リーグの歴史を変えた人物を3人挙げよう。ジャッキー・ロビンソン、マービン・ミラー、そしてフランク・ジョーブだ」

 ジョーブ医師を「黒人初の大リーガー」「フリーエージェント制度の生みの親」と並び評した。ジョン氏は、ただ「靱帯(じんたい)再建手術の第1号」になっただけではない。手術前の124勝に対して、手術後は14シーズンで164勝。20勝以上を3度もマークした上に46歳まで現役で活躍し、引退まで肘痛による先発回避はなかった。

 「8歳から大リーグの投手になるのが夢。まだ投げたかったから手術を受けたし、2年でも3年でもリハビリをする決意だった」とジョン氏。手術後16週間で初めてボールを投げ、その相手は妻のサリーさんだった。「強く投げ過ぎないからね」と声をかけたという。2週間後に相手を近所の男性にレベルを上げ、春季キャンプでは壁当てから始めた。

 「手術を受ける人には、『ゆっくりリハビリをするのが早道だ』と助言している」という同氏の経験と投手としての実績は貴重。関係者によると、来年にもベテランズ委員会によって殿堂入り選手に選ばれる可能性があるという。

 ★トミー・ジョン手術

 トミー・ジョン手術は、まず断裂または損傷した肘の側副靱帯(じんたい)を切除。前腕(ジョンの場合は手首)から腱を摘出して移植、修復する。腱を8の字に通すため、骨にあける3つの穴の位置や角度、腱をしばる強度に執刀医の経験や力量が表れるといわれる。移植した腱が定着してからリハビリを始めるため、復帰には15カ月かけるのが理想とされる。

 手術時間は当初、3-4時間かかったが、現在は1-2時間に短縮。手術跡も約25センチから約15センチになった。かつては手術を受けた投手の獲得は敬遠されていたが、成功率が上がってからは手術後に複数年契約を交わすことも珍しくなくなった。

 日本の多くの投手も手術を受けている。83年の村田兆治(元ロッテ)を皮切りに、荒木大輔(元ヤクルト)や桑田真澄(元巨人)、最近では松坂大輔(レッドソックスからFA)や和田毅(オリオールズ)がいる(ジョーブ医師の執刀以外も含む)。

フランク・ジョーブ(Frank Jobe)

1925年7月16日、米ノースカロライナ州生まれ、87歳。高校卒業後、陸軍に入隊。第2次世界大戦では看護兵として従軍。軍医の勧めで除隊後に医学の道へ進んだ。整形外科医となり、64年にクリニックを開業。68年にドジャースのチームドクターに就任。NBA(バスケット)やNHL(アイスホッケー)、PGAツアー(男子ゴルフ)などでも、チーフドクターや医療部門のアドバイザーを務めた。現在は、ド軍オーナー付きの特別アドバイザー。家族は妻と4男(医師2人、弁護士、経営コンサルタント)。

(紙面から)