阪神・矢野監督よ「人のふり見て、わがふり直せ」

エモやんのタイガースV指南
原監督(右)と話す江本氏。したたかさを絶賛した

 阪神OB江本孟紀氏(72)=サンケイスポーツ専属評論家=が厳しくも温かく古巣にアドバイスする「エモやんのタイガースV指南」。2回目は、来季勝負の2年目を迎える矢野監督へ「人のふり見て、わがふり直せ」の金言を送る。

 40年近く評論、解説の仕事をしてきたけれど、私の場合は監督の話がほとんど。個々の技術論は、必要に迫られれば話したりするけれど、やっぱりプロ野球は監督。私自身に経験はないし、監督をやろうなんて野心を持ったこともないけれど、ずっと監督の視点で野球を見てきた。どうしても「監督目線」の話になる。

 今も巨人の原監督とはよく話す。あの優しい顔でメチャクチャ厳しい。その厳しさがすっかり有名になっているけれど。分かりやすいのが4番岡本に対する姿勢。「4番を任せた」的な言い方をしても、悪かったらスパッと代えてしまう。原の厳しさを知っているから、ファンも厳しい。厳しい視線で見守るという環境ができている。そこに選手が育つ土壌ができている。

 対する阪神はどうか。大山に「4番を任せた」のはそれでいい。でも、不振でもいつまでも4番。これが、阪神の敗因の大きな1つになってしまった気がしている。矢野監督がどういう野球を目指しているのか、今までにジックリ話す機会がないので、グラウンド上で見えるさい配からの印象になってしまうけれど…。

 原監督は本当によく見ている。話す機会が多い分、そばで見ているけれど、本当に周囲をよく見ている。他球団のことも。で、さい配なんか、シレッと相手監督のマネをする。しかも、さも自分が考えついた、自分が最初みたいな顔をしている。このしたたかさが原監督の強さだね。

 人のふり見て、わがふり直せ!

 この言葉を矢野監督に贈りたい。原監督のいいところをマネなさい。他の監督でもいい。そして誰かに指摘されたら、自分でやった顔をしていればいい。

 最近でいえば、西武・辻監督もライバル球団のことをよく知っていた。セ・リーグのことも。だから勝てる。矢野監督がどれだけ知っているのか、興味はある。

 私もいろんな監督を見てきた。最初に接したプロ野球の監督は西本幸雄さん。高知の野球少年が「阪急子供の会」に所属して、バッティングを教わった。その中身は今も忘れていない。

 次はプロに入りたての頃、東映の田宮謙次郎さん。試合中にベンチで張本勲さんらが「エンドランの謙チャン!」とヤジってる。理由を聞いたら、エンドランのサインしか出さないから。プロってのは監督より選手がエラいのかと勘違いしてしまった(笑)。

 その後、南海で野村克也さん。この出会いは大きかった。

 阪神に移籍してからは吉田義男さん。サインは3種類しかなかった。それでも勝つのがすごい。そしてブレイザー。もし阪神がこの監督を解雇していなかったら、シンキングベースボールで黄金時代が間違いなく阪神にやってきた。今もそう確信している。

 こう書き連ねてきたけれど、実は私が最も影響を受けているのは西武黄金時代を築き上げた森祇晶監督。「優しいことを難しく言うのが野村、難しいことを優しく言うのが森」ですわ。どっちも嫌われてますが(笑)。

 その森さんが西武監督時代に推進していたのが「数値目標」。これを設定し、どうやってその目標に到達するか。政治の世界でよく言っていた「マニフェスト」だね。詳しい内容はまもなく本を出版するので、ここでは詳しくは記さないけれど。

 聞けば、矢野監督も各選手に「目標設定シート」を提出させているとか。森さんにどこまで近づいているのか。お手並み拝見だね。

★巨人・岡本の4番降格

 6月4日の楽天戦(楽天生命パーク)。原監督は昨年6月から岡本を144試合連続で4番で先発を任せてきたが、打撃不振のため、6番降格を決断。4番には坂本勇を入れた。「ビッグベイビーが困っているかな、というところで助けてあげようかな」と重圧の少ない場所に下げた理由を説明。岡本はその後、3試合連続で複数安打を放ち、同7日のロッテ戦(東京ドーム)で4番に復帰した。