引退決断の広島・新井は唯一無二の存在

小早川毅彦のベースボールカルテ

 4日に日本ハム-西武の解説で旭川を訪れ、5日に帰京したばかりなので、6日未明に北海道で発生した地震は人ごととは思えない。被災された方々に、心からお見舞いを申し上げます。

 5日は帰京の途中で、広島・新井の今季限りでの引退を知った。

 8月30日の巨人戦(東京ドーム)の試合前、2人で話をしたばかりだった。その前日に「5番・一塁」で7月24日以来のスタメン出場を果たし、逆転3ランを含む3安打3打点の活躍。「昨日はナイスバッティング! きょうはどう?」と声を掛けると、「体中が痛いですよ。風邪で1、2週間寝込んだあとのようです」と笑っていた。

 これまでは痛くても絶対に「痛い」と言わない選手だったから、おかしいなと思った。打撃練習では久しぶりのスタメンで緊張する小窪をリラックスさせようと、笑顔でやさしくイジっていた。いつもの姿だった。

 彼とは2006、07年に選手と打撃コーチとして、一緒に戦った。とにかく実直、素直、まじめで憎めない。主力になっても、後輩からイジられていた。それでいて、締めるところは締める。こんなリーダーシップの持ち主は、新井以外に見たことがない。良い意味で唯一無二の選手だった。

 外ではあまり打ち込みをしたがらず、練習場はもっぱら旧広島市民球場の三塁側ブルペン。今で言う早出の時間に球場入りし、練習パートナーだったブルペン捕手の水本克己(現2軍監督)が投げる緩い球を、いつまでも打っていた。そして、08年にフリーエージェント権を行使して阪神へ移籍。打撃コーチとして4番がいなくなるのは痛かったが、カープが好きなあいつが決断したのだからよほどのことなんだなと、自分の気持ちに波風を立てないようにした。

 41歳になっても全力疾走を怠らないし、引退はもったいないと思う。これだけ体が動くのなら、自分だったら引退したくない。しかし、本人が決めたことだ。「お疲れさま」はまだとっておく。34年ぶりの日本一を達成したときに言わせてほしい。(サンケイスポーツ専属評論家)

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