さらば新井さん…今季限り引退 広島と阪神で20年、愛された男の41歳決断

 
晴れ晴れとした表情で会見した新井。誰からも愛された男が今季限りでユニホームを脱ぐ

 広島・新井貴浩内野手(41)が5日、広島市のマツダスタジアムで会見し、今季限りでの引退を発表した。真っ先に引退の意向を伝えた盟友の黒田博樹氏(43)も「えっ、ホンマか?」とビックリする決断。阪神でも活躍し、誰からも愛される「新井さん」が、男の美学を貫いた。 

 ユニホーム姿のまま晴れやかな表情で壇上に上がった。新井が会見を開き、今季限りでの引退を表明。広島に生まれ、カープファンから最も愛されたスラッガーが惜しまれつつ、通算20年の現役生活にピリオドを打つ。

 「今シーズン限りで現役を引退することに決めました。若手がすごく力をつけてきている。これからのカープのことを考えたときに、ことしがいいんじゃないかなというふうに考えました」

 今季は開幕直前の3月の練習中に左ふくらはぎを痛め、14年ぶりに開幕1軍を逃した。5月の1軍復帰後は球団最年長弾を記録するなど要所で存在感を発揮したが、試合前時点で49試合、打率・222、4本塁打、20打点。8月初旬に球団に引退の意志を伝え、鈴木球団本部長からは「考え直してほしい」と何度も慰留されたが、同月下旬に心境の変化がないことを伝えて、了承された。

 悩みに、悩んだ決断だった。6月の交流戦後に「引退」の2文字がよぎった。球団OBで尊敬する黒田博樹氏に相談すると、第一声は「えっ、ホンマか?」と絶句したという。黒田氏は長く現役を続けてほしいという思いが強かったが、新井の「後進に道を譲る」と“男の美学”を聞いて「彼らしい」と納得した。

 02年オフに阪神へ移籍した金本の背中を追って、07年オフに虎移籍を決断。会見では「つらかったです。もうカープのユニホームを着られないのが寂しい」と涙を流した。その後、阪神では4番を務めるも優勝を果たせず、出場機会も減っていき、打席に立つとスタンドから厳しいヤジも飛んだ。身も心もボロボロになり、そのときに相談に乗ってもらったのも当時ヤンキースに所属した黒田氏だった。

 自由契約を選択し、黒田氏とともに15年に広島に復帰。3月27日のヤクルト戦(マツダ)、七回に代打で登場。右飛だったが、大歓声が沸き起こり「生涯忘れることはないです」。翌16年には通算2000安打を達成し、25年ぶりのリーグ優勝に貢献。MVPに選出された。その年限りで引退した黒田氏の「お前はボロボロになるまでやれ」とのエールとともに広島への恩返しの思いを引き継いで、チームを引っ張ってきた。

 「自分は別に大したセンスもない。練習することでここまでこさせてもらいましたしね、運のいい選手だったなと思います」

 誰からも愛される「新井さん」。五回には代打で空振り三振に倒れたが、阪神ファンからも大声援が沸き起こった。「そういう声も届いていたし、打ちたかった」。現時点では引退試合は予定されておらず、レギュラーシーズン、そして日本一を目指すポストシーズンの戦いが最後の勇姿となる。球団史上初の3連覇、そして34年ぶりの日本一へ、ポリシーの「全力疾走」で駆け抜ける。 (柏村翔)

ヤンキースなどで活躍した後、広島に戻り、新井とともに16年の優勝に貢献した黒田博樹氏「言葉で聞いたときはショックだった。最後までたくさんの声援を受けて一日一日を過ごしてもらいたい」

新井 貴浩(あらい・たかひろ)

 内野手。1977(昭和52)年1月30日生まれ、41歳。広島県出身。広島工高、駒大を経て、99年D6位で広島入団。2005年に本塁打王(43本)獲得。07年オフにFAで阪神移籍。11年に打点王(93打点)。14年オフに再び広島へ。16年4月26日のヤクルト戦(神宮)で通算2000安打を達成。リーグ優勝に貢献し、MVPに選出された。通算2370試合出場、打率・278、319本塁打、1299打点。1メートル89、102キロ。右投げ右打ち。今季年俸1億1000万円。背番号「25」

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